暗闇の中、見えるのはない。
はそんな中にいた。何故自分がここにいるのか、ここがどこなのかさっぱりだった。
「どこだ・・・・?」
ふと景色が変わった。目の前にいるのは二年前の自分。団服を着ている。そして背後にいるのは・・・・・
「、私・・・が好きよ」
「俺も」
「・・・・そだろ・・・・」
振り返ればそこにある瑪瑙色の瞳を持つ女が自分を見ていた。正確には二年前の自分を、だが・・・
「アリサ・・・・・・」
は苦しそうに名を呼んだ。女はニッコリと微笑んだ。
後ろの自分が笑顔になったのがわかった。
「、エクソシストの仕事は危険なんでしょう?気をつけてね」
「わかってる。別に死にはしないからそんなに心配すんなって」
「うん・・・・・でも」
「やめろ・・・・・」
は恐怖に引きつり、耳を押さえた。しかし声はどうしても頭の中に入ってくる。
「私、エクソシストにはなれなかったけど、探索部隊として頑張るわ」
「そうしろ。アリサに危険な仕事は似合わないんだから」
「まっ、ひどい」
アリサは笑顔で言った。自分も笑っている。
幸せな時間が流れている。そう、ここだけには。
「そうだ、アリサ。手出せ」
「手?」
アリサは首をかしげながら、手を差し出した。
はポケットから小さな箱を取り出した。そしてそれをアリサの手に乗せる。アリサはきょとんとした。
「これは?」
「プレゼント。開けてみろよ」
「・・・・・」
は知らず知らずのうちに自分の胸元にかかるペンダントを握り締めていた。
「・・・・・わぁっ」
箱を開けたアリサから感嘆の声があがった。美しい装飾の施されたペンダント。それは今のの胸元にかかるペンダントと同じ形だった。
「つけてやるよ」
はアリサからペンダントを受け取ると、アリサの首にかけた。
ペンダントはアリサの胸元で軽く揺れた。
「ありがとうっ!すっごく嬉しいわ」
「どういたしまして」
「大事にするわねっっ」
「うん?そうしてくれると嬉しいけどな」
場面が移り変わる。そこは炎に包まれたエクソシストたちの戦場。
「まさか・・・・」
は低く呟いた。ここは・・・・・・・あれが起こった場所なのか・・・・・
「アリサッ!」
自分の声がした。振り返れば、そこにはアクマの前に立つアリサの姿があった。
自分はおびただしい量の血を流し、地に倒れ伏している。
「裏切ったのか・・・・オレ達を?」
「・・・・・」
アリサは何も言わない。
自分の瞳には信じられない、といったような思いが見える。
「そんな・・・・・・」
「さよなら・・・・、愚かな人・・」
自分の瞳が大きく見開かれると同時に、アリサの瞳が驚きに染まった。
アリサの胸には鋭い刃が突き刺さっている。アリサはそれを呆然と見下ろした。そして倒れているを見ると悲しげに笑った。
「ごめんなさいね・・・・」
小さくそう言うと彼女は血を吐き出し、倒れこんだ。
「アリサァァァァッッ!!」
は必死に倒れたアリサのもとへはっていく。アリサもへ手を伸ばしてきた。
「アリサッアリサッアリサッッ!」
「・・・・・・・結局は私もあなたも愚かだったのね」
アリサはペンダントをはずし、の手に乗せた。
「愛してるわ・・・・・」
「アリサ・・・俺もだ」
「うん・・・・・わかって・・・」
アリサのまぶたが落ちた。の手が震えながらアリサの頬に触れる。血に汚れた顔を涙が伝っていった。
「わぁぁぁぁぁぁあああ!」
は飛び起きた。全身にびっしょりと汗が伝っていく。
「夢・・・・・・」
荒い息の中、はペンダントに触れた。冷たくなった石はあのときのアリサを思わせる。
あのとき、アリサは何を思って死んだのだろう・・・・・はそう思った。
あのあと、彼は駆けつけた兄によって助けられた。だがアリサは・・・・・既に手遅れだった。
「・・・・・・・・」
窓辺によったの目に2人の人間がうつった。とアレンだ。
どうやら任務は終わったらしい。白月は小さく笑う。
そして身を翻すと着替え、下に下りていった。任務を終えた2人を迎え入れるために。
「さてと、僕は報告に行くからアレンは怪我診てもらっておいで」
「そうします・・・・・」
とコムイの部屋の前で別れたアレンは医療班へ向かって歩き始めた。
「アレン」
「あっ・・・・・・」
「お帰り。どうした?顔色悪いけど・・・・・・・兄貴に何かされたか?」
「いいえ何も・・・・・・・・薬を仕込まれたことを除けば」
「めちゃめちゃ何かされてんじゃん・・・・・・」
は苦笑する。そして気がついた。
「アレン、もしかして足怪我してるのか?」
「はい。あっでもこれから医療班へ行くところですから」
「んじゃ、俺も行ってやるよ」
「でも悪いですし・・」
「かまわないさ。どうせオレにはまだ任務はないんだから」
「はぁ・・・・・」
アレンとは医療班へ来た。
中では一人のエクソシストが医療を受けていた。
「ありゃ誰だ?」
「神田っていうんですよ」
「へぇ・・・・・男?」
「ですよ。一応生物学上はね」
「女に見えるんだけどな・・・・・」
アレンは足の手当てをしてもらっていた。
「そういえば、も怪我しているんですけど・・・・」
「連れてくるから安心しろって」
はそう言うと医療班を出て行った。そして報告をしているであろうのもとへむかう。
「兄貴、お帰り」
「おっただいま。どうした?」
「怪我してんだろ。アレンが心配してたぞ」
「嬉しいね。アレンが心配してくれているなんて」
「いや多分違う・・・・」
「・・・・・・、どうしたの?元気ないようだね」
は一瞬での様子を見抜いていた。はふぃっとから顔をそらす。
「なんでもねぇよ」
「嘘ばっかり。顔真っ青。悪夢でも見たのかな?わが弟君は」
「別に。ただ悪夢ってほどでもないけど、夢見が悪かっただけだ」
「夢見が悪いというのを一般には悪夢を見たと言うんだよ、」
「あっそうですか・・・」
「・・・・・・アリサの夢を見たね」
の顔から血の気が引いた。はそっと弟の肩に手をまわす。
「あれは君のせいじゃないだろう・・・・・・・」
「オレが殺したようなもんだ」
「・・・・いつまでも失ったものに執着しては先に進めない・・・・・」
「・・・誰が言った?」
「ん〜任務先で出会った領主の幽霊が・・・・瑪瑙色の瞳を持つ女性に伝言を頼まれて、って言っていたけど?」
「瑪瑙色の瞳・・・・・・」
「そっvv僕たちの知り合いで瑪瑙の瞳を持つ女性なんかアリサくらいしか思い浮かばないでしょ?」
「・・・・・・・そうだな」
「・・・そんなに思い悩まないほうがいいよ」
の頭を樺月がぽんぽんと優しく叩いた。
「お兄ちゃんはそばにいるから安心しなさい」
「・・・・・・・・お前、今更お兄ちゃん呼ばわりされたいのか?」
「・・・・・・うん!だってなんだかいいじゃない?」
「・・・・・・・はぁ――、だからアレンに嫌われるんだな・・・・・・」
「えっ?!アレンて僕のこと嫌ってるのっ?!」
「・・・・・・・・・・・・」
は一瞬でも彼をかっこいいと思ったことをはやくも後悔した。
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