"冬乃"
「はい」
"あの2人の様子はどうなっている"
「今のところ、普通のようですね。というかばりばり普通に・・・」
"・・・・・・・注意せよ。あの者たちはお前に仇成す存在。油断はするな"
「わかりました・・・・」
"元帥、エクソシストを統治する場に立っていることをゆめゆめ忘れるな"
「はい・・・」
冬乃はテクテクと修練場にむかっていく。そこにはいつもの三人がいるはずだ。多分・・・
「アレン、神田、ラビいるぅ?」
案の定三人はいた。それぞれイノセンスを解放しているところから今からはじめるらしい。
アレンが冬乃に気がついた。
「冬乃さんっ!」
「お帰り、アレン。任務はどうだった?」
「眠り薬を飲まされました」
「過激ぃ〜」
「あなたほどじゃないでしょうけどね」
「ふふ・・・」
「冬乃、あの兄弟は誰さ」
オレンジの髪のエクソシストが話しかけてくる。ラビだ。
「、。2人ともエクソシストよ。ちょっと難ありだけど」
「そっかぁ・・・・・・」
「アレンはお兄ちゃんのほうに惚れられているんだよね」
「嫌なことを言わないで下さいよ・・・・・」
「アレン、そっちの趣味「ないですっっ!!」」
「ふふっ・・・・・で、これからはじめるとこ?」
「そうだ」
「じゃぁ私も混ぜてvv最近アクマ破壊してないから鈍ってないか心配で・・・・」
「冬乃は鈍ろうと思っても鈍らないさ」
ラビは言う。冬乃は笑顔でイノセンスを解放した。細長い紅の槍が現われる。
ヒュッとラビが口笛を吹いた。
「それだすん?」
「えぇ。さすがに三人相手じゃ風は無理。だからこれ」
「どうでもいい。さっさと始めるぞ」
神田の言葉で冬乃の周りを三人が包囲した。
「いつでもいらっしゃい」
冬乃の挑発するような言葉に三人が動き始める。
まず正面から向かってきた神田の『六幻』を槍の先で受け止め、弾き飛ばす。
そして槍を回転させると、背後のアレンの腹を突く。瞬間空いた冬乃の左を狙い、ラビがイノセンスを振る。
冬乃のイノセンスから炎があがり、盾となって冬乃を守った。
ラビは一瞬つまり、その隙を狙って冬乃がラビの肩を浅く切り裂く。それで勝敗は決まった。
「さすがですね・・・・・・やっぱり強い」
「ふふっ、伊達に修行しているわけじゃないのよ。でも三人とも強くなったわね」
嘘じゃない、冬乃の賛辞の言葉にアレンとラビの顔が嬉しそうに輝いた。
「でもまだまだね」
ガックリと肩が下がった。
「大きく振りすぎだな。もう少し・・・・・こう小回りを利かせるというか。まぁそんな感じ?てか、ラビはもうごーかいにいちゃってるでしょ」
「あっばれた?」
「バレバレだから・・・・・」
「・・・・・」
神田は小さく溜息をついた。冬乃はほけら、と笑って神田を見る。
「神田はもう少し殺気を抑えようよ。あれじゃぁ敵に自分の居場所を知らせているようなものだよ?」
「・・・・・・」
「攻撃は確かに威力はあるわ。でも敵に逃げられたら意味がないでしょう?」
「・・・・・・・」
「すごい・・・・神田が文句も言わないで聞いてる・・・・・・」
「冬乃だからさ」
「?」
「オレ達全員冬乃のこと好きだから、逆らえはしないのさ。まぁ冬乃のアドバイスは的確だからっつぅのもあるけど」
ラビの言葉にアレンは、そうですね、とうなづいた。
アレンも冬乃のことは好きだ。もちろん恋として。
「久し振りだな、修練場も」
「確かに・・・」
四人は声のほうをむいた。とが入り口に立っていた。
冬乃の目が細まる。
「あっアレンvv」
「来ないでくださいっ!」
はうなだれる。まるで悪戯をして花瓶を割り、叱られた子犬のようだ。
冬乃は小さく笑い、は兄から目をそらす。
「何しにきたの?」
「もちろん、訓練だけど?何か問題でもあるのかな」
「別にないわ」
冬乃は小さく微笑むと、槍をとにむける。
「私と戦って?」
「僕は女の子とは戦わない主義なんだけど?」
「それがノアであっても?」
「・・・・・・・もちろん」
「・・・・・・じゃぁ私が男ならいいのね?」
「何を言って・・・・・・女が男になれるわけ・・・・・」
「いや、・・・・・・この人はなれるよ・・・・・・それが彼女だから」
「はっ?兄貴なに言って・・・・・」
「O.K.やりましょうか・・・・・・」
「準備は?」
「大丈夫よ」
冬乃とは向かい合った。
「いつから気がついていたの?」
「初めて会ったときから。一目でわかったよ」
「洞察力が優れているのね。褒めてあげるわ」
「それはどうも」
冬乃ももニッコリと笑ってはいる。しかし互いに放たれているオーラは禍々しかった。
「兄貴・・・・・・・」
は心配そうに兄を見やる。兄はその視線に気がつくとニッコリと笑った。
「大丈夫だよ。死にはしないから。さすがに"裁定者"でも仲間殺しはしないだろう?」
「ふふふっ、"破壊者"が言うわね」
瞬間アレン・ラビ・神田の顔色が変わった。は何がなんだかわからない。
「冬乃さん・・・・・・」
「危険さ・・・・・・」
「さっさとどうにかしろよ・・・・・」
「兄貴は危険じゃねぇっ!!」
「"破壊者"は危険さ」
「何よりも戦闘を好むのだから・・・・」
「今はまだ"覚醒"はしていないんですね・・・・・・・」
「でも冬乃は無理やりさせるさ・・・・・」
ん〜、三人は目をつぶって考える。は兄と冬乃の戦いをハラハラとしてみていた。
冬乃は緋炎の槍でを切り裂こうとする。はそのたびに後ろへ飛び去り、絶妙のタイミングで蹴りを放つ。
「イノセンスは?」
「女の子とは戦わないって言ったと思うよ」
「でも私が女の子じゃなければ戦うんでしょ?」
「うん」
「なんで?」
「綺麗な女の子の顔を傷つけたくはないんだよ」
「それで自分が死んでも?」
「僕はまだ死なないよ。世界の崩壊に関わっているものなんだから」
鋭い蹴りを最速で繰り出しながら、はけろりとして言った。冬乃はその蹴りを受け、合間に槍を突き出す。
「だめねぇ、破壊者はいまいちね」
「ふふふ、裁定者だって同じだよ」
は2人の間に飛び込んだ。が、2人の攻撃は止まらない。
「しまっ・・・・・!」
「っ!」
ふと、どこからか花びらが現われ出た。
「げっ・・・・・」
「これは・・・・・・?」
「うわぁっ!!」
黒いマントがひるがえったは押し倒され、冬乃と2人の攻撃は何かによって受け止められていた。
冬乃の頬が引きつる。
「何をしているんだ?」
「も・・・・・・戻ってきた・・・・・・」
「これって天変地異の予兆ってやつさっ?!」
「ありえねぇ・・・・・・・」
「そこの三人、あとでオレの部屋に来い」
「「「やです(さ・誰が行くか)」」」
「ほぅ・・・・」
「「「行きます・・・・・」」」
真紅の髪がを見た。
「クっ・・・・・クロス・マリアン元帥・・・・」
が驚いたように名を呼ぶ。は飛び上がった。冬乃は相変わらず頬を引きつらせている。
「なにしてるんだ。お前ら2人は。互いを殺しあうつもりか?」
「まさか・・・そんなはずないでしょ。どのくらい強いか見ていたのよ」
「失礼ながら、僕も同じですがね」
嘘だ、絶対この2人殺しあうつもりだった!とは思った。
クロスはその答えに満足していないようだが、軽く鼻を鳴らすと冬乃に向き直った。
「何しているんだ。"裁定者"の目は確かに正しい。だが・・・本気で殺すつもりだったな?」
「・・・・・それが?」
「お前の思うとおり、こいつら兄弟は"破壊者"だ。だからと言って今は殺すな」
「・・・・・・・」
冬乃はそっぽを向いて修練場の出口へむかう。
「あの・・・」
「言っとくけど、私はあなたたちを許さないわ」
その言葉にはハッとなる。まさか彼女は・・・・・
その考えを頭で否定した。そんなはずはない。自分達が彼女と出会ったのはかなり前のことだ。冬乃はどう見ても20には見えない。だから・・・・。
「兄貴?」
「ん?」
「"破壊者"ってなんだ?エクソシストなら"救済者"じゃないのか?」
「"救済者"は・・・・・・・」
は口ごもった。クロスに助けを請うような目で見たが、クロスは目をそらした。
「あ〜〜そうだな・・・・・"破壊者"は・・・・・・・・あ〜殲滅、破壊、殺戮・・・・・とか・・・かな・・・」
「殲滅・・・・・・?」
「う・・・・・ん」
歯切れの悪い言葉と困った顔がを見ていた。
白月はいまいち納得がいかない。アレンもラビも神田もいつの間にかいなくなっている。
「とりあえず、」
「はっはいっ!」
「あとでどのくらい強くなったか調べてやる」
「こ、光栄ですっ!」
はそれなりにクロスを尊敬していた。が、彼もまだ予期していないことがあった。
否、・兄弟だけではないだろう。教団の大元帥・ヘブラスカを除く誰もが予期していなかったことがまだあったのだ。
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