アレンとが任務に出て一時間後。
朝早くにアレンの叫び声もとい怒号で起こされた低血圧のはやっと眼が覚めていた。
「アレンもこれから苦労するなぁ・・」
食堂で襲い朝食をとりつつ、はそう呟いていた。
あの兄とまともに付き合っていけるのは自分と彼女くらいじゃないだろうか。
小さく溜息をつく彼に声をかけてきたものがいた。
「ここいい?」
「ん?」
顔を上げたが見たのは黒髪をツインテールにした少女。外見から察するに16〜18歳あたりだろうか。
少女は首をかしげた。
「・・・・・あっ、どうぞ」
「ありがとう」
少女は盆を机に置き、座る。そしてを見て、笑顔で言った。
「こんにちは、私リナリー・リーよ。・・・・」
「君、または呼び捨てで結構」
「うんじゃぁ、くんで」
「オレはなんて呼べばいい?」
「好きな呼び方でかまわないわ」
「んじゃ、リナリー」
2人はニコッと笑いあった。
「そういえば、くんのお兄さん、えっと・・・・さんだっけ・・・・もしかしてアレンくんのこと・・・」
「あ〜〜ありゃぁ病気。あの能天気兄貴のね。まぁ一時的なものだろうから」
はコーヒーを一口飲んだ。目の前の少女をカップごしにちらりと見る。長い黒髪、優しげな瞳・・・・似ている。
「ん?ちょっとまて・・・・・リナリー・リーっつったか?」
「うん」
「・・・・・」
ピシリと音を立ててが固まる。リナリーはカップを持ったまま固まるを不思議そうに見た。
「もしかしてコムイの妹じゃ・・・・」
「うん、そうだけど?」
「あ〜あんまり似てないんだな・・・・・・・それでもどこか根本的なとこが似ているように見える」
「そう?」
「あぁ」
リナリーはの胸元にさがるペンダントに眼をむけた。青くてひし形の石だ。周りにはガラスで縁取りがされている。
「あぁ・・・コレ、気になるのか?」
「あっごめん・・・・・・」
「って何謝ってるんだ?別に怒ってないけど・・・・・」
「あっえっと・・・」
「・・・・・・コレな、俺の一番大事なやつから預かったものなんだ・・・次に会うまで預かっていてくれって言われて渡された」
「そう・・」
「今度いつ会えるかわからないけどな」
の笑みは半ば自嘲的なものだった。
「もう一度会いたいとは思っているけど」
「・・・・・きっと会えるわよ」
「だといいけどな」
「・・・・・・リナリー」
2人の会話に静かな声が入った。が顔をあげると真紅と翡翠の瞳と目があった。
リナリーが笑顔になる。
「どうしたの、冬乃」
「ん、あのね・・・・・ちょっとだけ裁縫道具貸してくれない?団服の裾がほつれちゃって」
「うん、わかった。じゃぁここで待っていてよ。取ってくるから」
「ありがと」
リナリーは食堂を出て行く。冬乃と呼ばれた女はの前に座った。
「はじめまして、君」
「・・・・・・・あんたは?」
「瑚乙冬乃。あなたと同じエクソシストだよ」
「・・・・・・兄貴が言っていたのはお前か?兄貴のこと(ピー)って呼んだって・・・・」
「あぁそれ私。本当のことを言ったまでよ?」
「確かにそうなんだけどな・・・・」
は乾いた笑い声をあげた。冬乃のほうは興味深げにペンダントを見ている。
はその視線に気がつくと首をかしげた。
「何かあるのか?」
「その持ち主・・・・もう死んでるでしょ」
「!!?」
「なんでわかるんだって顔してるね。わかるの、私には。ちょっと特別な力。綺麗な人だったんだね。黒髪で・・・・あぁ、リナリーに雰囲気がそっくり。でもこの人・・・・かなり悲劇的な最期ね」
瞬間はテーブルを通り越し、冬乃を押し倒していた。に押し倒されながらも冬乃は平然としている。
「私は普通に見えたことを言ったまでよ?」
「てめぇ・・・・・オレの前で二度とそんなことを言うんじゃねぇっ!!もちろん、兄貴の前でもだっっ!」
「お兄さん想いなのね・・・・・優しい弟。でもそんなのは所詮弱者の戯言に過ぎないわよ」
「お前・・・・・何を知っている?」
「・・・・あなたたち2人の身の上話も知っているし、そのペンダントの持ち主のことも知っているわ。コムイも何か知っているみたいね」
はぐっと唇をかみ締めた。口の中に鉄の味が広がる。と冬乃、2人の周りに人が集まり始めた。
「二度と・・・・・二度とオレの前でこのペンダントの話はするなっ」
「・・・・・わかったわ」
は謝罪の言葉を述べながら、冬乃に手を差し出した。冬乃はその手を握り返す。
「今後一切オレ達兄弟には関わらないでくれ。特にお前はな」
はそれだけ言うと食堂から出て行ってしまった。
冬乃は小さくその口に笑みを浮かべながら、彼の背中を見送っていた。
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