は船室のソファ座り、祈るようにしていた。

「死なないで・・・・・・誰も・・・・・頼むから僕の前から消えないで・・・・・」

瞼を閉じては仲間達の血まみれの姿が浮かんでしまう。は頭を抱えた。
自分がいては誰も彼もが不幸になってしまう。にいて欲しい・・・・アレンが・・・・・・・・・

「頼むから・・・・・・・皆無事でいて」

ふと外がざわめいていることには気がついた。立ち上がって船室の外へむかう。そして思わず眼を見開いた。
甲板の中央にはラビ、冬輝、シェルが立ち、その近くに巨大な何かとアクマがいる。周りは船員達が取り囲んでいた。

「ラビッ!」
?」
「それは・・・・・・っ!」

はラビに近寄ろうとしたが、頭にはしった痛みに近寄れなかった。ラビのほうへ近寄ろうとすればするほど痛みは強くなっていった。

「お前が破壊者だと知っているイノセンスらしいな。拒絶してやがる」
「これは・・・・・?」
「リナリー・リーのイノセンスだ。レベル3のアクマと相討ちになりかけたところを助けたらしい・・・・・・あ〜くそっ、イノセンスの悲鳴が聞こえてきやがる」
「・・・・・相当強いですね・・・・・・・そして・・・・・」
「あぁ。前例がない」

冬輝はブックマンへと顔をむけた。記録している。
ラビは不服そうな顔をして冬輝を見た。

「こいつはどうするんさ」
「別に危害は加えなかろう」
「そうだっちょ」

そうだっちょ?!
は唖然とした。アクマがエクソシストに刃をむけない?(そのまた逆も然り)
どういうことか、にはさっぱりわからなかった。

「そいつは?それといったいその物体は何・・・・?」
「リナリーのイノセンスさ。これが勝手に動いてリナリーを守った」
「・・・・・はっ?」
「それからこっちは・・・・・アクマ・・・・クロス元帥に改造されたやつさ」
「・・・・・・・さっぱり意味がわからないんだけど」
「だろうな。普通なら考えられないことだ」

の頭が余計に混乱した。彼らの言っていることがわからない。

「これはクロス元帥の使いだそうだ。やれやれ・・・・・・あの男、冬乃に信頼されているだけあるな。まさか・・・・こんなことまでやっちまうとは」
「冬輝・・?」
「お前、本当にクロスの使者なんだな?」
「ちょっ!」
「わかった・・・・・・おい、てめぇら。こっからは俺が指揮をとる。従いたくないやつは別行動でもかまわない。ただ生きられる可能性は極端に減るからな」

カツンと冬輝のブーツがなった。

「こっから今行く場所が生きて出られる可能性皆無の場所だ。オレとシェルはその可能性皆無の場所からお前たちを出すために来た。足手まといなやつは置いて行く。覚悟しておけ」

そういうと冬輝はリナリーのイノセンスだというものに手を当てた。
バチバチと火花が散り、冬輝の手のひらから煙が上がる。シェルが慌てているが、冬輝は意に介した様子もない。

「戻れ・・お前の主はこちらで助ける」

冬輝の言葉が届いたのか、イノセンスから発せられていた光が細くなっていく。
光が完全になくなると冬輝の腕のなかにリナリーがいた。今は気を失っている。ラビがすぐさまかけよった。

「リナリー!!」
「・・・・・・・・ラビ・・・・」

リナリーが気がついた。

「・・・・・・私はまだ・・・・・・世界の中に・・・・・・・いる?」

リナリーの言葉にラビの目から涙が溢れた。

「ばかやろ・・・・・」
「よかった・・・・・・・」

も力を抜かしてしゃがみこんだ。
泣きそうになってくる。あまりの嬉しさに。そして・・・・・安堵感に・・・・・
ほんの少しだけ神に感謝した。

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