ラビたちはいきなり現れた二人のエクソシストに瞠目した。
それはここにいるはずのない二人。

「冬乃・・・・とミシェル元帥?」
「なんだ、冬乃の知り合いか・・・・・」
「冬輝様、それは当たり前ですよ。冬乃様のお仲間なんですから」
「それもそうか」

二人にそうこう会話している間にもアクマからの容赦ない攻撃が降り注ぐ。

「"時空穴タイム・ホール"」

片方のエクソシストの前に巨大な穴が開き、攻撃をその中に吸い込んだ。
穴はキュッと締まり、消えてしまった。

「・・・・・お前らは?」

もう片方のエクソシストがラビを振り向いた。

「オレ達?罪を裁く者と時空を操る者だ。まぁお前達の味方だから安心しろ」
「名は?」
「瑚乙冬輝」
「シェル・ブランドです」

二人はかぶっていた頭巾を取り外した。冬乃やミシェルにソックリな顔。
二人はおかしそうに笑った。

「俺たちは冬乃とミシェルの弟妹」
「これからクロス隊に加わりますので、どうか宜しくお願いします」

二人は礼儀正しく頭をさげた。が、頭を上げたかと思うと、二人の目が剣呑に輝いた。

「シェル、動けるか?」
「もちろんです」
「俺は海とじゃ相性が悪い・・・・頼んだ」
「かしこまりました」

シェルという名の少女は胸から銀時計を取り出した。

「"時空の鍵"我が力は時をも超える。我が前に伏したるは罪まといし、黒き鋼」

銀時計は巨大なものへと変わっていく。そして形をも変えていった。
やがてそれは一本の銀の鍵へと変わる。

「開けよ、我が前に時空の扉」

鍵がゆっくりと回っていく。まるで鍵穴に鍵を差し込んで回すかのように。
ギギギと音がした。ラビ達にむかって降り注いでいたアクマの攻撃が方向を変える。

「シェルのイノセンスは時空間を操ることによって破壊する。兄ミシェルはアクマの中へと入り込んで破壊する。兄妹そろって厄介者だ」

攻撃が何もない空間へ吸い込まれた。シェルは一度指を鳴らすと鍵が一瞬にして時計に戻る。

「終わったか」
「はい。あとは自爆してくれるのを待つだけです」
「ご苦労。さてと・・・・・・」

冬輝がたちをむく。
其の途端船をアクマの攻撃が襲った。冬輝は軽く舌打ちをしてシェルを見る。

「雲間に隠れていますっ!」
「あんにゃろ・・・・」
「"時空穴"っ!」

シェルの凛とした声が耳朶を打つ。巨大な穴ができたが、それでも攻撃は吸収しきれず、次々に船員へと当たっていった。

「レベル2だ。冗談じゃねぇぞ・・・・・・・・おいっ、あの女はどうした!ツインテールの」
「レベル3と戦いに行ったさ!」
「あぁちくしょ!」

冬輝は舌打ちをする。

「俺もイノセンスを解放する!頭、さげてねぇと死ぬぞ!」
「そっちを使われるんですか!」
「決まってる」

冬輝は腰に下げてあった銀の輪を取り外し、空中に放り投げた。

「"暗闇に光る稲妻"」

巨大な弓矢が冬輝の手に現れた。
矢を引き絞り、冬輝は遥か上空へと狙いを定める。

「"落ちろ 雷帝"!」

巨大な雷鳴がした。金色の光が眼をやく。
巨大な波ができあげる。
ゲッと冬輝は青ざめた。

失敗ししくった!」「冬輝様っ!!」

シェルが必死に襲いくる攻撃と波を穴の中へと吸い込んでいく。
その間にも船員たちはアクマの攻撃を受けていた。

「おい、そこの"破壊者"!!」
「えっあっ僕?!」
「てめぇだ!!おい、後始末は俺がしてやるっ!さっさと・・・?!」

船がガクンと揺れ始めた。全員の顔に違和感の色がつき始める。

「舵が・・・・動かない?」
「ちっ、何が起こってるんだ・・・・・・てかだから海上での戦闘はやなんだ・・・・・・」
「・・・・・冬輝様・・・・・・!」

舟が半分海に沈んだ。

「なんだ・・・・・何が起こって・・・・・・・」
「これ・・・・・・」

ミランダのイノセンスに鎖がまきついていた。
それを見た冬輝とが同時に叫んだ。

「それだっ!」

叫んだ途端、船の半分が沈没する。

「重力操作だ!レベル3の新しい能力だな。だからさっさと破壊者を目覚めさせろっつってんだ!てめぇの能力はなんだ!言ってみろ!」
「・・・・・・・・そうか!」
「わかったらさっさとやれ!後始末は俺がつけてやる」
「・・・・・・・・・・」

は顔をあげた。冬輝を見ると強くうなずいている。不思議と彼のことは信用できた。
迷わない。今ここでこうしているあいだにも自分達に協力してくれている人たちが死んでいく。
誓ったばかりなのだ。死なせない、と。だから・・・・・・目覚めさせよう、お前を・・・・・・

「破壊者、解放・・・・・」

の静かな声は船の喧騒の中に溶け込んでいった。

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