「アレンッ!」
!!来ちゃダメです!!」

の足がアレンの拒絶の言葉で止まった。
そばにスーツ姿の男が立っている。

「アレン・・・・・」
「・・・・・・お前、って苗字?」
「っ!なんで知っている・・・・」
「いや、知り合いがおまえを殺したがっていてな」

は剣に手をかけた。
もちろん男が誰なのかはわかっている。

「そいつが誰だか当ててやろうか・・・・・」
「お前ならわかるだろう?」
「アリサ・ミューシカだっっ!」

は剣を抜いて男に切りかかっていった。
男はひょいっと軽くよける。はアレンをかばうように前に立った。
アレンの様子がおかしいように感じたが、それはあとで確かめればいいことだ。

「正解だよ、
「てめぇらには・・・・・・・・てめぇらなんかには俺の仲間は絶対に殺させねぇっ!」

は男に切りかかる。

「そういえば、俺の名前を言ってなかったな」
「これから死ぬやつの名前なんか聞きたくねぇよ」
「・・・ティキ、ティキ・ミック。よろしく」
「てめぇが次に自己紹介するのは地獄でだっっ!」
「なぁ、お前って破壊者なんだろ?見せてくれよ、俺に・・・・」
「誰が、見せるかっ!」

鋭いの剣先がティキの肩口を深く切り裂いた。
血が吹き出し、の顔をぬらす。
は一足飛びでティキから離れた。

「やれやれ・・・・・・・やられちゃったよ。でも・・・・・一対一で痛みわけだな」
「何を・・・・・・」

パリン、と澄んだ音がした。の顔が強張って手の中のイノセンスを見やる。
パリンッとまた音がして、イノセンスにひびが入った。

「なっ・・・・・・」
「知ってた?俺たちノアと千年公はイノセンスを破壊できんだよ」

お前たちエクソシストがアクマを破壊すようにな、とティキはつけたして言った。
のイノセンスに見る間にひびが入り、やがて・・・・・・

パキッ

という音とともに粉々に砕け散った。

「・・・・てめっ」
「まぁそう怒るなって。オレ達敵だぜ?敵を倒すのは当たり前だろう?」

ティキの言い分は最もだ。しかしは冷静に物事を考えられなくなっていた。

「イノセンスのなくなったお前に用はないからな」

ティキの腕が一閃する。の体が吹き飛ばされ、近くの木に思いっきりぶつかった。
の息が一瞬とまる。ティキの笑みがぼんやりと見えた。

「そこで見てろよ・・・・・・自分の仲間が死ぬところを」
「アレンッ!」

の周りで風が巻き起こった。

"仕方ねぇな・・・・・"

そんな声が耳元で聞こえた。の体がティキとアレンとのあいだに滑り込む。

っっ!」

ティキの顔を覆う紅い霧が目に入り、アレンの引きつった声が耳に届いた。
の意識が一瞬にして途絶える。

パキッという音には手を止めた。
アクマとの交戦は終わりをむかえ、船内では血の臭いがしていた。
音は胸元から聞こえてきた。胸元には兄弟二人で撮った写真が金色の鎖に通されたロケットの中に入っている。
それを取り出し、写真を見たの顔色がかわった。ラビが心配そうに声をかけてくるが、の耳には入らない。

・・・・・」

の写真にひびが入っていた。
彼の体全体を覆うようにしてひびははしっている。
何かあったのだ。弟に・・・・に何かが起こったのだ。

「良くないことが起こる・・・・」

マホジャが小さく呟いた。

「血をこぼしたような暁だ」
「ラビ」

リナリーの声が聞こえた。見れば、港にリナリーが満身創痍で立っている。

「助けて・・・・・・」

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