「黒の修道士様がクロウリーめを退散させたー!!今宵、勝利は我らにありっ」
村長の感激の声が響いた。それを聞いたは彼を睨みつける。
「うるさいよ。ちょっと黙ってて。傷に響くんだから」
はポケットに入っていた包帯を傷に巻いていた。
が、圧倒的に数が足りない。とりあえず怪我の大きいところだけの巻いていった。
白い包帯は既に赤く染まっている。
「・・・・・・・・・・ところでなんで皆さんそんなに離れているんですか?」
アレンから村人たちは遠く離れていた。はアレンの隣に立っている。
ちなみにラビは、というと・・・・・・・は背後を振り返り溜息をついた。
「ラビ、なにやってるの・・・・・・・・・別に吸血鬼に噛まれたからってアレンは吸血鬼にはならないよ」
「それはわかんないさ」
どこから調達してきたのか、首ににんにく、手には杭を持っていた。
アレンが暗く沈む。
「アレン、大丈夫。保障するよ。君は吸血鬼にはならないって・・・・・・さぁ行こう」
「・・・・・・・・・・傷は大丈夫ですか?」
「ん?なんてことないって」
はへらりと笑った。
そして三人のエクソシストはクロウリー城へ向けて歩き出した。
「エクソシストが吸血鬼退治やってるんさー」
「でも何かおかしくないですか?」
「何故、クロス元帥はこんなところに用があったのか?かい」
「えぇ・・・・・」
アレンはの言葉にうなずいた。
「よく考えると僕たちに吸血鬼退治をさせるなんておかしいですよね」
「確かに」
「ラビ、君は僕らの会話で知っただけでしょ・・・・・・・」
階段を上り、上へ向かいながら三人は話していた。
階段を上りきり、廊下を歩く。そんな三人の鼻に甘い香りがただよった。
突然ラビが倒れる。は鼻を抑えた。アレンもまたしかり。
「この匂い・・・・・」
「アレンッ!」
意識ある二人の体に粘ついたものが巻きついた。
「うわっ!」
体が持ち上がった二人の前に巨大なツボミが姿を見せた。
二人が困惑しているうちにツボミがいきなり開く。
「「花?」」
二人が同時に呟いた途端、その花から触手が飛び出してきた。
花の中央には牙も生えている。
足元にも無数の花が開いていた。
「食人花だっ!」
、アレンはイノセンスを発動し、手が動く範囲で花を破壊し始める。
「ラビっ!おきて!!ちょっと食われるよっ!!」
「ラビ、起きてくださいっ!」
花を破壊しつつ、二人はラビを起こそうと必死になる。
「なんか僕ら餌になりかけてるんですけどぉ!!」
の悲痛な叫びが響く。その声が耳に入ったのかラビが小さくうめき声をあげた。
と。
「そこで何をしている!!これはこの子達はアレイスター様の大事な花たちよっ!」
女が姿を見せた。その女の姿を見たラビの眼がハートになる。
を吐き気が襲った。
(アクマか?!)
ラビに注意を呼びかけようとするものの、ラビは聞いてはいない。
アレンの言葉も聞いていないため、アレンのイノセンスが金槌よろしくラビの頭に振り下ろされる。
「何するさっ!」
「何あんなのに興奮してるんですか!!あんなのよりも冬乃さんのほうがよほど綺麗ですっ!!」
「ほぉ・・・・あの美しさがわからないなんてアレンもまだまだ子供さぁ」
「わからなくて結構です!!」
「あんなの・・・・・・・(プチッ)」
「くしゅ・・・・」
「冬乃様、お風邪ですか?」
冬乃は小さくくしゃみをする。ミシェルが心配そうに冬乃を見た。
冬乃は首をかしげた。
「さぁ・・・・誰かが噂でもしてるのかしら。そうそう二回連続で悪い噂、三回だと良い噂らしいわ」
「一回だと風邪ですよ。あとでクスリをお持ちしますね」
「ありがと」
はアレンの意見に賛成だった。誰が―しかもエクソシスト―がアクマを綺麗だと褒めにゃならんのだ。
もラビにコブシを叩き込みたくなった。が、のイノセンスはあいにくと伸びはしないのだ。
とりあえず、ラビの制裁はアレンにまかせ、は上のほうにたつ女に眼を向けた。
「お姉さん、てかおばさん、ここにフランツって人が来なかった?」
最上級の笑み―しかし黒い―で女にそう尋ねる。女の額に青筋がたった。
ニコッと微笑むと女が手に引いていたものを持ち上げた。
「これのこと?あぁあげるわ」
女が花畑の中にフランツを投げ込む。樺月が手を伸ばすもそれは花の触手に捕らえられた。
花たちはフランツに群がり、バリバリと喰らっていく。
はそのとき見たのだ。フランツを食べた花にペンタクルが浮かび上がるところを。
しかしそれはほんの一瞬の出来事だった。花たちが爆発し、三人は吹き飛ばされることになる。
「がはっ!」
三人は煙の中から飛び出してきた。
「さすがは特性のコートですね。打撲程度で済みました」
「うん・・・・・あ〜死ぬかと思ったぁ・・・・・・・」
「ねぇちょっとオレ吐いていい?腹うった」
ラビはそう聞いた。しかしアレンとは聞いてはいなかった。
二人の目は下のほうにむいていた。
「墓だ・・・・・」
そこには数々の墓標が立てられていた。三人は墓地に向かって降りる。
墓標の数は八つ。アレンが呟いた。
「これ、連れ去られた村人の数じゃないですかね」
「ん?クロウリーにやられたんは九人だろ?」
「始めの一人は蒸発したって言ってたじゃ・・・・」
アレンの指先が木で組まれた十字に当たる。十字が崩れた。
「あー壊したぁ」
「ちょっと触っただけなのに!!ごめんなさいっっ」
「アレン、ちょっとお手柄かもしれないよ」
「え・・・・・・」
はしゃがみこみ、土を払い除ける。そこから顕れたものにラビもアレンも絶句した。
「ペンタクル・・・・これが浮かび上がっているってことはこの下に埋まっているものは・・・・・・」
「アクマさ」
三人は互いに顔を見合わせ、近くの墓を掘り明かした。それぞれの棺を開けるとやはり中にいたのはアクマの残骸だった。
腐臭が当たりに漂う。
「あのクロウリーってやつが襲っていたのはアクマだけみたいね・・・・・」
「つまり、僕らが敵だと思っていたあの人は・・・・」
「敵じゃないさ。俺たちの・・・・・」
「ラビッ!」
アレンとの声が綺麗に重なった。
ラビが振り向く直前、彼は何者かによって強い力によってはじかれた。
彼がぶつかった石造が破壊される。
「・・・・・・・・・・」
とアレンは無言のまま彼―アレイスター・クロウリー―を見ていた。
彼はにやりと口の端をつりあげた。
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