「吐け、何用で参った?」

リナリーの病室。ブックマンはレベル2のアクマと対峙していた。
コムイは未だ目覚めぬリナリーを抱いてその様子を見守っていた。

「ク・・クク、千年伯爵様からのメッセージだ。"時は満ちタ。7000年の序章は終わり、ついに戯曲が流れ出ス。開幕ベルを聞き逃すな。役者は貴様らだ、エクソシスト!"」

そう言い終えるとアクマの首が、ブッと音を立ててちぎれコムイにむかっていった。
ブックマンがそれに気がついたが時既に遅し。アクマの首はコムイの喉に噛み付こうとしていた。

「室長!」

の声が聞こえると同時に爆音がした。

「リ・・・・リナリー・・・・・」

の長剣とリナリーの"黒い靴ダークブーツ"がアクマの首を粉砕していた。
が剣をしまいながら微笑む。

「目、覚ましたんだね」

リナリーはにむかって微笑んで、うなずいた。
ブックマンもコムイも安心したように笑う。と・・・・・

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!

三人分の悲鳴が聞こえてきた。病室の窓が割れ、外からラビ、アレン、が飛び込んできた。
そしてアレンとラビはそのまま突っ込んでいった。は途中手を離し、クルリと一回転して着地した。
ドガシャーンッ!という派手な音を立ててラビとアレンは壁にぶつかった。部屋中にホコリが蔓延する。

「げほっ・・・・・ラビ・・・・・」
「あはは、悪い。これ便利なんだけど、ちょいブレーキがきかないんだなぁ。でも気持ちよかったろ、アレン」

ラビの言葉にアレンは答えない。

「?アレン」

とラビのそばの煙に人影が写った。見るとそれは気絶したアレンを頭にのせているブックマンだった。

「小僧ども・・・・」
「うわわっ!」
っ!?」

はうずくまったに駆け寄った。リナリーとコムイもそばに来る。

「どうした?!アクマの攻撃でも受けた?!」
「き・・・・・」
「き?」
「気持ち悪・・・・・・うっ」
「酔った・・・・・・?」

の言葉にはコクコクと首をふった。
それだけかよ、とリー兄妹は心の中で突っ込む。

「だってあれめっちゃ揺れるんだぜ?まじやばいって」
「あ〜くんは初体験なんだね・・・・結構貴重だよ、あれは」
「どこが?!俺死にかけたぜ?」
「あれはラビの運転がちょっと下手なだけだよ」
「ちょっとどころじゃないし。てかあれはもう下手とかそういうやつじゃなくって、もう乱暴だから・・・」

ラビとアレンはブックマンに叱られている。
はそんな二人を少しだけ面白そうに笑ってみていた。
そしてその後、彼らは汽車に乗るため駅まで馬車に乗っていた。
その馬車の中でのこと・・・・・

「元帥が殺された・・・・・?」
"えぇ、七人いる元帥の中でも最も高齢でありながら最前線で戦っていた私の弟子、ケビン・イエーガーがね・・・・ベルギーの教会にある十字架に裏向きに吊るされて背中に神狩りと彫られていたわ"

アレンたちと話すのは冬乃の立体映像ホログラムである。アレンのティムキャンピーが冬乃のゴーレム、フィアから映像を受け取り、それを再生していた。
映像の冬乃のそばにはミシェルも沈痛な面持ちで立っている。相当深刻な問題のようだ。

「神狩り・・・?」
"イノセンスのことです。ちなみに僕と妹を除いた元帥は任務と一緒にイノセンスの適合者探しもしているんです。イエーガー元帥の所持していたイノセンスは本人のものも含めて九個"
「九・・・・・多いな」
"瀕死の重傷でも生きていたイエーガーは歌を歌っていたわ"
「歌?」
「それってどんな?」
"千年公は探してる。大事なハート探してる。私はハズレ、つぎは誰・・・・・・・・千年公ってのは千年伯爵の愛称みたいよ"

冬乃とミシェルは黙ってしまった。
アレンは疑問を口にする。

「あの・・・・"ハート"ってのは・・・・?」
"私たちの探すイノセンス109個の中に、心臓とも呼ぶべき核のイノセンスがあるの。それは全てのイノセンスの力の源でもあり、全てのイノセンスを無に帰す存在でもある。私たちはそれを手に入れて初めて終焉を止められるのよ"
「そのイノセンスはどこに?」
「わかんない」
「はっ?」
「それがさぁ、ぶっちゃけどんなイノセンスで何を目印に見つけたらいいかとか書かれてないんだよ。僕も色々やってるんだけどさぁ、古代の人も不親切だよねぇ」
"・・・・もしかしたらもう回収済みかもしれないし、誰かが適合者になっている可能性もある。ただ始めに犠牲となったのが元帥だった。伯爵はエクソシストの中でも力のあるエクソシスト元帥に目をつけたのかもしれないわね"
「そう、アクマに次ぎノアの一族が出てきたのも戦力増強・・・・でもいくら元帥でもノアの一族とアクマから攻められては不利だ。各地の仲間を集結させ、四つにわける」
"・・・・・・・・元帥の護衛が今回の任務なの。少し予定が狂ってね。本当は元帥が戻ってきたときに全員でハート探しに行かせようと思ったんだけど・・・・・・イエーガーが殺されてしまったから"

冬乃とコムイの言葉にアレンたちは唖然とした。
冬乃は大きく溜息をつく。疲れているのは立体映像の冬乃は頬がやつれて見えた。

"クロスは弟子の中でもかなり優秀だったわ。まぁその分厄介だったけど・・・・・・・・・コホン、それで私が元に戻るまで元帥に指令を出していたのは大元帥たちね。指令を受けたらあとは個々の判断で動くから正確な場所はわからない。あっでもブランド兄妹はとりあえず私指令で。まぁそれはどうでもいいのよ。他の弟子は皆月に一回は連絡をよこすから大体の動きはわかるの。でもねぇ問題外なのがクロスなのよ・・・・・全っ然連絡よこさないでなにやってるのかしらって思ったくらい。しかも四年間音信不通なのよっ!死んだとか任務そっちのけで遊んでるとか色々言われてるし"

冬乃はブツブツと文句を言っている。ミシェルが苦笑しながら冬乃のあとを引き継いだ。

"他のチームは皆さん元帥の弟子です。このチームはティムキャンピーが案内しますよ"
「ティムが?」
"ティムは科学者でもあるクロスが造ったものです。契約者のことならどこにいてもわかります"
「すごい・・・・・僕も用に一つ欲しいな」
「冗談じゃねぇ・・・・・・てかそれはこっちの台詞だ」
"で、コムイ室長の考えでは三年間クロスと一緒にいたアレンなら行動パターンを知っているんだから、あとは袋のネズミだぁと"

ミシェルは半分呆れたように言っていた。
コムイはミシェルの言葉に苦笑を浮かべていた。
冬乃ははぁぁぁぁと長く息を吐き出した。相当な疲れが溜まっているらしい。ミシェルが紅茶のカップを冬乃の前においた。

"ありがと・・・・・・・・"
「あの冬乃さん・・・」
"うん?"
「先ほどから二回ほど出てきてるんですけど、ミシェル元帥の妹さんって・・・・・」

リナリーの疑問にミシェルも冬乃もたいした興味はないかのように手を振った。

"そのうちにイヤでも会うことになるわよ"
"面倒なことにはならないと思いますが"
"大丈夫でしょ"

冬乃とミシェルは何やら二人だけで納得している。
なんだか奇妙な不安感をぬぐえないアレンたちだった。

"ともかく・・・話を戻すわ。皆無事に帰ってきなさい。私が言えるのはそれだけ。私はここにいるしかできないからね・・・・・私の分まで頑張ってきて頂戴"
「はい」

冬乃が笑ったのを最後に立体映像は消えた。
それと同時に馬車も止まる。コムイが笑顔で言った。

「皆が無事に帰ってくるのを待っているよ。気をつけて」

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