「巻き戻しの町、ねぇ・・・・」
「、どういうことですか?」
「ん〜調査の発端、その街の酒屋と流通のある近隣の町の問屋の証言。先月10月9日に『10日までにロゼワイン10樽』との注文の電話を酒屋から受け、翌日10日に配達。ところが何度町の城門をくぐっても中に入れず外に戻ってしまうので、君が悪くなり問屋は帰宅。直ぐに事情を話そうと電話したが通じず、それから毎日同じ時間に酒屋から『10日までにロゼワイン10樽』との電話がかかってくるらしい」
は手元の資料を見て言った。
アレンとリナリーは溜息をつく。はコーヒーを飲み干した。
「リナリー、この町からも出られなくなったんだろう?」
「えぇ・・・・城壁を壊しても、城門から出ても元の場所に戻っちゃうの・・」
「それってつまり・・・・」
「閉じ込められたな・・・・・・」
今度はも加わり、溜息の合唱が起こった。
「アレン。でその逃げた女ってのは・・・・?」
「この人です」
「・・・・・・・・」
アレンの差し出した絵を見たリナリーとは黙ってしまった。アレンは首をかしげる。
「この顔って・・・・・てかこれ自体絵じゃないと思う」
「うん・・・・」
「この人すごく逃げ足が速くって・・・・でもほら、こんな顔だったんですよ」
「こんな顔って・・・・これ顔じゃないから」
は手元の絵を見て苦笑する。アレンに絵の才能は期待しないほうがよさそうだ。
「でもまっ・・・・・・ってアレン?」
カシャーン
アレンの手からフォークが滑り落ちた。
とリナリーはアレンの見ている方向を見て、体をすくませた。
女が一人、三人のことをじぃっと見ていたのだ。
「ああああ!!」
アレンの大声に女は体をビクリとさせ、逃げる。
「!この人ですよっ」
は逃げようとする女のショールをつかんだ。窓から逃げようとした女の足がとまる。
は笑った。
「逃げないで・・・俺たちは別にあなたを殺そうとしたわけじゃないから」
の笑顔に警戒をといたのか、女はアレンたちと同じテーブルについた。
「わ、私はミランダ・ロットー。嬉しいわ、この町の以上に気がついてくれる人に会えて」
「あの・・ミス・ミランダ・・・・あなたにはこの町が異常になり始めてからの記憶がある?」
「ええ、皆は昨日の10月9日のことは忘れてしまうみたいだけど・・・・私だけなの」
「ミス・ミランダ、あなたが原因に最も近しいんじゃないか・・・・・」
はそういった。三人の視線が集中する。
は傍らの太刀を手に取った。
「何故ミランダが他の人たちと違い、奇怪の影響を受けないのか・・・・・・・アクマも気がついたらしいな」
アレンの左目が反応する。それと同時に酒屋の中にいた客たちが立ち上がる。
「なるほど、つまりミランダさんが原因のイノセンスに接触している人物だってことですね!」
アレンとにアクマが襲い掛かる。リナリーはミランダを抱いて外へ飛び出した。
「アレン、人数の少ないほうへ誘い込むぞ!」
「はいっ!」
二人は路地へ走りこんだ。アレンは荒くなった息を整えながらに言う。
「まさか僕よりもはやくアクマに気がつくなんて思いもしませんでした」
「オレでも意外、なんてな」
「もアクマを感じられるんですか?前に樺月が自分たちは呪われているって言ってましたけど」
「あぁそれはな・・・・・・兄貴お得意の冗談だったりするんだ」
「えぇぇぇぇっ!」
「よっぽどアレンが気に入ったんだな。冗談でからかうなんて・・・・アレン?」
はアレンの後ろで死神が立っているのが見えた。ぞくっと背筋があわ立つ。
「おーい、アレン君?」
「許しません・・・・・今度会ったら叩きのめして・・・」
「いや、あれでも一応オレの兄貴だからやめておいてくれって・・・・・」
「まぁ・・・・が言うなら・・・・」
「そりゃどうも」
は苦笑を浮かべ、追ってきたアクマと対峙する。レベル2のアクマだった。はかったるそうに太刀をアクマへ向ける。
「のその太刀はイノセンスなんですか?」
「そうだ。まぁお前も聞いたと思うけど、ヴァイオリンもな」
「二つのイノセンス・・・・?」
「いや、俺のは二つに分かれててさ。で両方ともヴァイオリンにしても仕方ないから、攻撃用に太刀にしたってわけ。ヴァイオリンはサポート用」
「なるほど・・・色々考えているんですね」
「まぁな」
二人はアクマの攻撃をかわしながらも会話を続ける。
「しっかしまぁ・・・ってわっ!」
アレンとの足が燃えた。
「炎より熱いアイスファイア」
「切り裂こう切り裂こう」
「だめだめ、僕のヴォイスで脳みそを破壊したほうが面白いよ」
残った三匹のアクマは言う。三匹は意見の食い違いを知ると、じゃんけんを始めた。
は剣圧波で、アレンは銃型のイノセンスの形にアクマを攻撃した。
「何すんだ、テメェ!じゃんけんの隙に攻撃するなんて卑怯だぞ!!」
「あん?てめぇらだって、多勢対二人だったろ」
「てかそんなもん待つわけないでしょ」
「エクソシスト、ブッ殺す!」
アクマの攻撃に身構えたアレンと。しかしアクマの動きがピタリと止まった。
「?なんだ・・・」
が疑問を口にした途端、アクマたちは消えた。
アレンと二人でアクマの逃げたほうを見ながらは考えた。
あの気配・・・・アレンは気がついてはいないようだが、間違いない。アリサと同じ気配だった。
ということは・・・・
「アクマがいきなり逃げた?」
「あぁ・・・・・リナリーはどう思う?」
「ん〜わからないなぁ」
アレンとはミランダの家にいた。
今アレンはリナリーに足の手当てをしてもらっている。は自分で治療した。
「で・・・・ミス・ミランダは何を?」
は時計を拭いているミランダへ顔をむけた。
「私達とアクマのことを話したら・・・・・」
ミランダは時計にブツブツと文句を言っている。
はそばによった。
「ミランダ」
「私は何もできないの・・・・!」
「ん?」
「あなたたち、すごい力を持った人なんでしょう?だったら早くこの町を助けてよっ!」
「もちろん」
ミランダがのほうをむいた。の隣にアレンがしゃがみこみ、お願いのポーズをする。
「もちろん、この町を助けます。でもそのためにはこの奇怪と何かで関係しているミランダさんの助けが必要なんです。僕たちに手を貸してください」
「お願いします」
コチン、と大きく時計が鳴った。ミランダがビクンとし、ベッドにもぐる。
アレンとは呆気に取られてみていた。
「寝るんですかっ!!」
「アレン、様子が・・・変だ」
ゴーン
部屋の中を見ると部屋中に様々な形の時計が出来ていた。は窓枠に手をかけ、アレンと手をつなぐ。アレンはリナリーと手をつないだ。
時計の針が逆回転をし、部屋の中に無数の時計がなだれ込んできた。
「今日の時間を吸っているんだっ!!」
カチリと音がし、回転がとまると窓から明かりが差し込んできた。
「朝ぁ〜!!?」
ミランダがベッドからムクリと起き上がる。
「あら・・・・・?私いつの間に寝たのかしら」
ミランダの部屋を見ることができる屋根の上で一人の少女と一人の女が話していた。
少女の足の中には先ほどアレンと白月を襲ったアクマがいた。
「スゲー今の」
「そうね」
「ロード様、エクソシストを放っておいてもいいのですか・・?」
「いいじゃん?あいつらがイノセンスを手に入れるまではねぇ?」
ロードと呼ばれた少女は傍らの女に眼を向ける。
「アリサ、どうしたのぉ?なんかいいものでもあった?」
「えぇ・・・・・懐かしい玩具がね」
「誰ぇ?」
「あの黒髪のエクソシスト。あっ男のほうね」
「ふぅん・・・・姿はいいけど、僕の玩具にはなりそうもないなぁ・・・僕はあの女の子の方がいいや」
「ふふふ、そう・・・・・・・・・」
女―アリサは目を細めた。そこにはがいた。
「楽しめそうよ・・・ロード」
「それはよかったねぇ。お姉ちゃん」
二人の姿が消えた。
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