はぼぉっとして空を見ていた。
暇らしい。普段なら出仕するべきなのだが、晴明が今日は物忌みだから出仕を控えろと言ってきたために休みになった。
つまりに暇になったのだ。
「・・・・・・・何しよう」
「」
「騰蛇・・・・」
褥の上で横になってごろごろとしていたが戸口から聞こえた声に身体を起こした。
見れば騰蛇が昌浩を抱えて立っている。
「すまないが、昌浩の面倒を見ておいて貰えないか?」
「えっ騰蛇、どこにいくの」
「晴明についていかなければならなくなってな・・・・・」
「ほかの神将に任せれば?」
そうがいうと騰蛇は心底嫌そうな顔をした。
つまり昌浩溺愛の騰蛇としてはほかの神将に昌浩を任せるようなことはしたくないのだ。
「わかったよ。大丈夫」
昌浩を受け取りは微笑んだ。
騰蛇は安心したように笑うと姿を消した。
は騰蛇が消えたのを見届けると自分の褥へ昌浩を寝かせた。小さな寝息を立てていた昌浩は口もとに微笑を浮かべている。
「・・・・可愛い」
昌浩の寝顔を見ているとこちらまでねむくなってくる。はうとうとと眠り始めた。
また式神たちも同じようにまぶたを落としかけていた。
「!!」
螢斗と翡乃斗の緊迫した声には飛び起きた。
「なっなに!?」
“昌浩が消えた!!”
が褥の上を見れば、なるほど。そこで眠っていたはずの昌浩がいなくなっている。
は慌てて飛び起きた。
「探さないと!とりあえず手分けしていこう!」
二匹はうなずくと人の姿をとり、姿を消した。も部屋から出て邸中を探し回る。
晴明の部屋、(無断だが)吉昌や昌浩の兄達の部屋、露樹の部屋、書庫も。
がどこにも昌浩はいなかった。
もしや妖に連れ去られたのでは、という考えが頭に浮かぶがそうではないと頭をふる。
妖がそばにくれば、いくら眠っているとはいえ、だって気がつく。
「螢斗、翡乃斗、見つけた?!」
「いや・・・・・・」
“どこにもいないのだ”
三人は困ったような顔をする。
は昌浩がいなくなったら騰蛇はどうするかな、と考えてみた。そして恐ろしい考えに行き着くとそれ以上考えるのをやめた。
「そういえば部屋は探したのか?」
翡乃斗の言葉には首をかしげる。
「翡乃斗たちが探したんじゃないの?」
“我らは探してないぞ”
三人は顔を見合すと先ほどまでいた部屋にむかった。
「いたぁ!!」
のほっとした声が響いた。
昌浩はすやすやと褥の上で眠っていた。は安堵のあまり、座り込んで長く息を吐き出した。
「いったいどこにいたんだか」
“さぁな”
「見つかったんだからいいようなものの・・・・・はぁ、心臓に悪いわ」
式神たちもどこかほっとしたような表情を浮かべる。
晴明がこのことを知ったら確実にまずいことになっただろう。
「もう昌浩、どこにも行っちゃだめだからね」
は昌浩の頬を軽くつつくと隣に横になった。今度はどこにも行かれないよう、昌浩の腰と自分の腰に紐を巻いてつなげた。
「皆が帰ってくるまではゆっくりとお休み」
その後晴明はの部屋を覗いて微笑んだ。騰蛇も軽く笑う。
、昌浩、翡乃斗、螢斗はすやすやと眠っていたのだ。
「姉弟みたいだな」
「確かに」
そして彼らを起こさぬようにそっと部屋から離れて行ったのであった。
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