キオは約百年ぶりに護廷十三隊へやってきた。
向かう先は一番隊。そこには各隊の隊長と副隊長がそろっているはずだ。
彼女のあとをついて行くのは、副隊長のみ。残りには仕事を任せてある。
「久し振りですね、ここにくるのも」
「百年前、新しい零番隊のことを告げに来て以来だからな」
一番隊の前に来て、二人の足が止まった。
副隊長が不思議そうにキオの顔を覗き込んだ。
キオは笑っていた。
「キオ様・・・・・・・」
「いや・・・・あいつら、私のことをどんな顔で見るのかって想像したらおかしくって・・・・・・・さぁ入るか」
二人は『一』と書かれた巨大な扉を押し開いた。
中にはたくさんの死神がいた。彼らはいっせいにキオたちのことを見て眼を丸くする。
「久し振りだな、護廷十三隊の隊長、そして副隊長」
「キオ・・・・・・だと?」
「おいおい、既に死んだ者を見るような目つきで見るな。私はちゃんと生きている。隠居してただけだ」
「何故今更」
「現零番隊長から要請を受けた。『桜香』封印の」
『桜香』と聞いた隊長たちの顔色が変わった。
一人の隊長が進み出てくる。
「キオ、君は百年前、『桜香』を封印したと聞くが」
「あぁ封印したはずだ」
「はず?!」
隊長のみならず、キオの背後にいる副隊長までが思わず聞き返した。
「どっどういうことですか?!」
「いや・・・・・後で調べたんだが、あれは封印ではなくて破壊しなくてはならないらしい」
「何で今まで言わなかったんですか!!」
「一度封印したら私でも解けない。もう一度目覚めるまで待つしかなかった。それに、いくら私でも破壊まではいかない。封印するのが手一杯だ」
キオは淡々と話した。あまりに淡々としすぎていたために、隊長たちは何も言えなかった。
「隊長・・・・・・」
「それでどうするのじゃ」
隊長たちの中で一番年老いた死神がそうたずねる。
キオは不適に微笑んだ。
「現世にいい死神になれそうな人間がいてな。そいつをここへ召喚しようかと」
「できるんですか?」
「私を誰だと思っている。そう伊達に香神の当主を務めているわけじゃないさ」
副隊長は諦めたように息をついた。
「なにかすることは?」
「咲夜、倖斗、悠希を東、西、南の流魂街に配置。お前は北流魂街にいろ」
「何故?」
「召喚するときに反抗されたら落ちる場所を誤るからだ」
「わかりました。すぐに」
副隊長の姿が消える。話についていけなかったのは、隊長たちだ。
キオは隊長のほうへ体を向けると笑った。
「というわけだ。これから召喚の儀式を行う」
「ここでやれ」
「床に傷がつくぞ?」
「かまわん」
キオは軽く肩を上下させると、斬魄刀で床に複雑な模様を書き始めた。
言ってみれば魔方陣のようなもの。キオはガリガリ音をさせながら、模様を書き終える。
「こんなものか・・・・・・・・・・さて」
キオは魔方陣の中央にしゃがみこむと、小さな星に手を当てた。
星を中心とした魔方陣が光り始める。
「さぁこちらへ来い。お前の力が必要なのだから・・・・・・・・」
キオはしばらくじっと眼を閉じていたが、おもむろに立ち上がると、一番隊の外へ出た。
外には副隊長以下、元零番隊員たちがそろっていた。
「探しに行けっ!逃げられては困る」
「御意」
彼らはシュッと姿を消した。
キオは溜息をつく。
「逃げ足だけは速そうな娘だな・・・・・・・」