「あっおはようございます、ミシェルさん」
「おはようございます」

は廊下に出てミシェルに挨拶をする。
ミシェルは金髪を長く伸ばしていて、顔の右側のほうが前髪で隠れていた。
聞くところに寄れば、見られたくない傷跡があるのだという。

「あの・・・・・キッチンってどこにあります?」
「キッチン?何の用があるんですか?」
「ここにおいて貰っているお礼です。皆さんの朝食を、と思いまして」
「・・・・・・案内しますよ」

ミシェル的にこの女は気に入っていた。容姿が学生時代の同級生に似ているというのもあるかもしれない。

「ここです」

は案内されてきたキッチンを見て唖然とした。
何もない。
ともかく何もないのだ。皿も鍋もはしも・・・・・冷蔵庫を開けても水くらいしかない。

「あの・・・・一体何を食べていらっしゃるんですか」
「たいていは外食になりますね」
「・・・・・・・・何か食べるものを買ってきますね」
「お金は・・・・・」
「大丈夫です」

はそのあと部屋に戻っていった。
ミシェルは何もないキッチンを見回してから主の部屋にむかう。

「ヴォルデモート様、入りますね」

彼の主はソファの上で寝息を立てていた。
一瞬彼は疑う。この人が本当に闇の帝王なのか、と。

「ヴォルデモート様、起きてください」

ミシェルの声でヴォルデモートは眼を覚ます。
ミシェルは小さく微笑んだ。

「なんだ」
のことを報告に」
「何かあったのか」
「いえ、なにも」
「・・・・・・なら何を報告に来た」

ミシェルはやはり微笑んだままだ。ヴォルデモートの機嫌が少し悪くなる。

「さっさと言え」
「・・・・・ヴォルデモート様・・・・いえ、リドル、いいものを手に入れたね」
「・・・・・・・」

ミシェルは唯一ヴォルデモートに敬語なしで話せる相手だった。
誰もいないときに限って、だが。

「あの子、中々面白い子だね。水しかない冷蔵庫を見て、何か買ってくる、だってさ。お金、どうするんだろうね」
「俺は知らない」
「本当は気になるくせに」
「ミシェル・・・・・・・・」
「僕はあの子のこと気に入ったよ。殺すんなら僕のところにちょうだいね」

ヴォルデモートはフンッと鼻を鳴らした。

「主のものを取るか?」
「ってことは気に入ったんだね」

ミシェルの笑顔にこぶしを打ち付けてやろうか、とヴォルデモートは思った。
と、そこへいつの間に戻ったのかが顔を出した。

「リドルさん、ミシェルさん、朝食作ったんですけど召し上がりますか?」
「僕はいただきます。ヴォルデモート様はどうします?」
「今はいらん」
「そうですか・・・・・・じゃぁさん、行きましょうか」
「はい」

とミシェルは部屋を出て行く。
ヴォルデモートは溜息をついた。

「ミシェルが執着する意味がわからん」

「はぁ・・・・・・これ、全部リズさんが?」
「はい。お口に合うとよろしいんですけれど・・・・・」

は頬を染めて言った。
机の上には様々な料理が並べられている。
中にはミシェルの好きな料理もあった。

「おいしそうですね・・・・・・いただいてもよろしいですか?」
「はい」

ミシェルは机に付くと、ナイフとフォークを取る。
そして一口食べてみた。

「!!」
「・・お口にあいませんでしたか?」

が心配そうに聞いてくる。
ミシェルは眼を丸くして驚いたように呟いた。

「すごく・・・・・・・おいしい・・・・・・・・・リズさん、やっぱりあなたはいいですよ!!」

本音の褒め言葉には嬉しそうに飛び跳ねた。

「やった。喜んでもらえるとすごく嬉しいものですね」
「あなたがここにいてくだされば毎日食べられるんだ・・・・・・・ここに残ってくれませんか?」
「えっ・・・・・・」
「あなたにここに残ってもらいたいのです。もちろんあなたが嫌なのならば強制はしません」
「・・・・・・かまいません。どうせ家に帰っても誰もいないし」
「じゃぁ・・・・・」
「はい。こちらこそおいてください」

の言葉にミシェルが笑顔を見せた。

「では、これからよろしくお願いします。さん」

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