翌日、ミシェルがの部屋に朝食のことを報せに行ったときのことである。
「リドルッ!」
「朝から騒がしい」
「それどころじゃないんだっ!」
「なんだ。部屋が荒らされでもしていたか?」
「がいないっっ!!」
コーヒーに口をつけていたリドルはその一言で噴出した。
ガタンッと音をさせて立ち上がる。
「本当か?!」
「うん、部屋に行ったら誰もいないんだ。念のために・・・・わっ!」
リドルはミシェルを押しのけて家を出て行った。
ミシェルは唖然として、そして慌ててリドルのあとを追って行った。
は町を彷徨っていた。
大通りを過ぎたあたりから雨が降り始め、道行く人々が急ぎ足で歩いていく。
そんな中傘もささずに歩いていくを人々は遠ざけていた。
「私・・・・・」
「ッ!」
後ろから聞こえてきた声には振り向いた。
リドルが駆けてくる。は反射的に逃げ出した。リドルはそれでも追いかけてくる。
町外れまで走ったところでの足が雨に滑って、転ぶ。地面に転がる直前だったの体をリドルが引き寄せた。
「リドルさん、放してくださいっ!」
「いやだ」
リドルに抱きしめられたは必死で反抗する。それでもリドルは決して放そうとはしなかった。
「何故館を出て行った」
「私は迷惑になるだけです。きっと・・・・・」
「そんなことはない。、お前の飯をミシェルが褒めていた。相当珍しいことだぞ?」
「そんなことだけじゃ・・・・・・・・」
「それに・・・・・俺にはお前が必要なんだ」
「・・・・・・えっ?」
は困惑した表情を浮かべながらリドルの顔を見ようとした。しかしリドルは顔をの肩にうめ、見せようとはしなかった。
「・・・・・・お前が好きだ」
その言葉にの目は丸くなった。リドルは優しくに微笑みかける。
「セイじゃない。会ってまだわずかなのに、お前がいつの間にか心を占めていた。・・・・愛してる」
「リドルさん・・・・・・」
リドルはに口付けた。はそれを受け入れる。
「戻ろう、」
「・・・・・・・・・戻っていいんですか?」
「もちろん。ミシェルが紅茶を用意して待っているから」
はクスッと笑みを漏らした。リドルが羽織っていた上着をの頭からかける。
はきょとんとしてリドルを見上げた。
「今更だが、羽織っておけ。体の線が透けて見えるぞ」
「えっ/////」
は顔を真っ赤にさせて上着をぎゅっと体に巻きつけた。
リドルはクスリと笑みを漏らすとの体を抱き寄せた。
「帰ろう、」
「・・・・・・・・・はい」
二人はどちらからともなく手をつなぐと歩き出した。
「さんっ!」
「ミシェルさん・・・・」
「ご無事だったんですね、よかった・・・・・さぁヴォルデモートさまも中に入ってください。温かい紅茶を淹れてありますよ」
「すまないな」
「いえ」
ミシェルは濡れた二人のために乾いたタオルを持って行った。
リドルがの髪を拭いているのを見ると目を丸くする。
二人は楽しげに笑っているではないか。そしてミシェルは安堵したように笑みを漏らした。
「まったく二人でいちゃつかないでくださいね。僕もいるってことをお忘れなく」
「そういえばそうだったな」
「そうだったな、って・・・・・・・・忘れていたんですかっ!それはひどいでしょう」
ミシェルはぷくっと頬を膨らませてリドルを見た。はクスクスと笑った。
「さん」
「はい」
「これからは二度と黙って出て行かないでくださいね?心臓がとまりかけますから」
「・・・・・・すみません」
「わかってくれればいいんです。それにさんがいらっしゃるとヴォルデモート様も中々機嫌がいいので」
「お前・・・・・・・」
リドルの声が氷点下になった。リドルの周りで吹雪が起きているような気がする。
は軽く身体を震わせた。
「あはははは、本当のことですよ」
ミシェルは面白そうに笑う。やリドルもつられるようにして笑った。
外では雨が雪へと代わっていった。
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