が死んだ・・・・
そのことがリドルの心を引き裂いた。
ミシェルは昏々と眠り続けるリドルを辛そうに見た。
「・・・・・」
ミシェルがの姿を見たとき、彼女は美しく、清らかな姿になっていた。
アズサがミシェルの傍らで泣いていた。
白いワンピースに着替えさせられたはその顔に辛さのいっぺんも残らせてはいなかった。
きっとリドルの腕の中で逝けたことが嬉しかったのだろう。
が、リドルはが死んだことにより、眠ってしまった。マダム・ポンフリーの必死の手当にもかかわらず、が死んでから三日経った今日もまだ目覚めない。
「リドルを・・・・・連れて行かないで・・・・・彼を・・・・・」
「ミシェル・・・・リドルは?」
「・・・・・全然だよ・・・目を覚ます気配なんかない」
リドルの頬にアズサは触れた。
彼の中に魂は感じられない。
「お願い・・・・・リドル、目を覚まして・・・・・・・・僕たちがそばにいるから・・・・・・」
「リドル・・・はあなたに死んでほしくないの・・・・・・・・あなたに生きてほしいのよっ!」
「・・・・・・バカリドル・・・・・・・わからずや、残されていくものの気持ちなんかわからないじゃないか・・・・」
アズサとミシェルは必死にリドルを起こそうとしていた。しかしリドルが目覚める気配はない。
もう二度と起きないのか・・・・そう思い始めた矢先だった。
"リドル・・・私の愛しい人"
そんな声が聞こえてきた。ミシェルとアズサが顔をあげ、そして瞠目した。
リドルのそばに一糸纏わぬ姿のがいた。
「・・・?」
は愛しそうにリドルの頬を撫でた。そして悲しそうな顔をする。
"あなたは死んではいけないのです。あなたは生きなければ・・・"
はリドルと唇を重ね合わせる。小さなうめきがリドルの口から漏れた。
が唇を離すとリドルの瞳がゆっくりと開かれていく。
「・・・・・?」
"リドル・・・私のあとを追うようなことはやめてください"
「でも・・・君がいない世界なんて考えられないんだよ」
"あなたのことをずっとミシェルやアズサは待っていました。あなたは、彼らの気持ちを無駄にするのですか?"
は優しく、それでいて厳しくリドルをいさめた。
「でも・・・・・それでも・・・・・」
"あなたの心の中に私はいき続けています。それだけで本当に十分です、リドル"
リドルはの頬に手を伸ばした。はその手と自分の手を重ね合わせた。
"死んでもあなたのことを忘れません"
の姿が消えようとしていた。リドルはの体を引き寄せる。
「また・・・・君は僕の前から消えるんだ・・・・・・僕を一人にして」
"あなたは一人じゃない・・・・私がいなくてもミシェルやアズサがいます。だから大丈夫"
「それでも・・・・僕はだけでいい」
"リドル・・・・・・私はあなたの中にずっと・・・・・・"
それがの最後の言葉だった。彼女の体は光の粒子となってはじけて消えた。
リドルは上体を起こし、ミシェルとアズサを見た。
「ずっと俺のそばにいたのか・・・・」
「・・・・・・・・・この、バカリドルッ!人を散々心配させておいて、それでいてのあとを追おうとしたの?!」
「・・・・・・・・・悪かった・・・・・・」
「バカッ!この人でなしっっ!僕とアズサがどんなに心配したか知らないくせにっ!!」
リドルは泣きそうになって、それでも笑った。ミシェルは頬を膨らませてリドルを見る。
「バカだよ・・・・・君は僕がいないとだめなんだからね」
「あぁ・・・・・本当にそうだな」
「リドル・・・・・」
「アズサも。悪かったな」
「ううん、よかった・・リドルが目を覚まして」
アズサは嬉しそうに目に涙をためて言った。
リドルはそっぽをむくミシェルの頭に手を置いた。
「・・・・・・僕は君よりも年下じゃないよ」
「なんとなく年下に見えたんだ」
ふんっとミシェルはまたそっぽをむく。リドルとアズサは笑ったのであった。
そしてミシェルも体を震わせはじめる。
「バカリドル・・・・」
「あぁ。まぁそんな俺に付き合うお前もまたバカじゃないのか?」
「まぁね・・・・・・・」
何日ぶりかの明るい笑い声が部屋にひびいたのであった。
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