焦る心を落ち着けようとリドルは必死だった。しかしマクゴナガルの言葉がいつまでも耳の中で響いている。
ミシェルとともに医務室へ向かうリドルは心の中での名を呼び続けていた。
「・・・・・ッ!」
のもとへとたどり着いたリドルは絶句した。
のまわりは真っ赤に染まっていた。真っ赤に染まるベッドの中央では激しく咳き込んでいた。
「げほっ・・・・・・げほっ・・・・・・」
「・・・・・・・?」
「リ・・・・・げほっげほっ」
「セイッ!」
咳き込むたびに口から赤い血が飛び出してくる。の顔もリドルに負けず劣らず真っ青だった。
は荒い息をつきながらリドルを見た。
「こんな・・・・恥ずかしい・・・・とこ」
「・・・・・だめだ、まだ死ぬなんて・・・・・・・・」
「・・・・・・・リドル・・・・・・・・」
はリドルにむかって弱々しいながらも微笑んだ。
リドルの後ろで呆然と立つミシェルにも目を向けるとは口を開いた。
「ミシェルも・・・・ごめんなさい・・・・・・げほっ・・・・」
「ッ・・・・そんな・・・・・・・嘘・・・・だよね?」
「アズサは・・・・・・・・・?」
の声に応えるようにアズサが姿を見せた。いつもは明るい顔が、今は涙でぐしゃぐしゃになっている。
「泣かないで・・・・・・アズサ・・・・」
「・・・・・やだよ、そんな・・・・・・・・」
「ミシェル・・・・・」
「早すぎるよ、・・・・・・」
「リドル・・・・・」
「なんで・・・・・・ッ!!」
そこへダンブルドアが姿を見せた。
「せんせ・・・」
「・・・・・」
ダンブルドアはにむかって杖を振る。の咳が止まった。
「ありがとうございます・・・・・」
「いいんじゃ。何もできず、すまんの・・・・」
そう言ってダンブルドアは姿を消した。
リドルは咳の止まったを抱きしめた。
「リドル・・・・血がついて」
「かまわない・・・・・・僕はこんなことしかできないから・・・・・・・」
「そんなことないのに・・・・・・・・」
「ッ」
「アズサ、ミシェル・・・・・ごめんなさい。いろんなものをいっぱいもらったのに、私は結局何も返せなかった・・・・」
「そんなことないわ・・・・にはいっぱい楽しいこと教えてもらったもの」
「の笑顔で十分だよ」
「・・・・・・ありがとう」
ミシェルとアズサはリドルとを二人っきりにするためにそっと医務室から出て行った。
リドルはを抱きしめたまま一言も発しなかった。
「リドル・・・・・?」
「・・・・・・まだ逝かないでくれ・・・・・・」
「・・・・・・ごめんなさい」
「何を謝って・・・・・」
「あなたを独りにしないと約束したのに・・・・・病気を治してあなたのそばにいると・・・・・私は・・・・・ひどい裏切り者です・・・・っ」
リドルはを強く抱きしめた。の碧眼から涙が溢れる。
「・・・・・・いくらでも自分のことを裏切り者だなんて言ったらいけない・・・・それは僕が許さない・・・」
「でも・・・・・・でも私はっ!」
「は・・・・・は僕を救ってくれていたんだから・・・・」
「・・・どういうことですか?」
「君がそばにいてくれたから・・・・・・ただそれだけで僕は、僕でいられたんだ・・・・・・・・・」
リドルはを抱きしめる力を弱めると、そっと血に染まった唇を重ね合わせた。
「リドル・・・・・」
「愛してる・・・・・・・・君だけを・・・・君だけなんだ・・・僕には君だけしか・・・・・・」
「私も・・・・あなただけです。あなただけを愛しています」
「君がいなきゃ僕は・・・・・・・」
「・・・・・・リドル、あなたは私の分まで生きてください・・・・・・おねが・・・・・・・げほっげほっ」
「ッ」
「リドル・・・・・・ごめんなさ・・・・・・・・・」
ひゅーひゅーという音を混ぜながら、は涙目で謝った。リドルは泣きそうになるのを堪えながら、首を振る。
「あなたが・・・・・・あなたに会えてよかった・・・・・・リドル・・・・・・・クリスマスのとき・・・・・に戻りたい・・・・・・」
「ッ」
「あなたに出会えたあの時に戻って・・・・もう一度愛したい・・・・・あなたを」
「・・・・・・」
「リドル・・・・・・・愛してます、いつまでも・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・」
スルリとの腕が垂れ下がった。ゆっくりと瞳が閉じていく。
やがて完全に体の力が抜けた。
「・・・・・?」
リドルがの名を呼ぶ。しかしセイは答えない。
「ッ!!そんな・・・・・・・・・・ッ目を覚ましてっ!僕の名前を呼んで!!ッッ!」
必死で声をかけて体を揺さぶるが、に反応は見られない。
「ッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
体を抱きしめ、冷えていく唇を重ね合わせても、は目覚めなかった。リドルの体がを抱いたまま崩れ落ちる。
「・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁっ!」
リドル・・・・・愛してます
この命尽きても、あなたの心に私がいつまでも残りますように
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