朽木白哉は朝からずっとそわそわとしていた。
「少しは落ち着いたらどうだ、白哉」
「ですが、父上・・・・・・」
白哉は困った顔をして父を見上げる。
「今日来るのは妻となる者なのでしょう・・・・・同じ上級貴族の」
「あぁ」
白哉が落ち着きを取り戻す間も無く、一人の艶やかな女が姿を見せた。
白哉の父、紅輝は立ち上がると女に向かって笑顔をむける。
「久しいの、紅輝」
「相変わらず美しいままだな」
「お前のほうこそ、変わらぬ」
女は自分の背後へと目を向けた。
「ほれ、。お主もさっさと挨拶しぃや」
おずおずと顔を出したのは女に顔立ちが似た小さな少女。
黒髪に落ち着いた色合いの着物を着ている。少女は白哉を見ると、キャッ、と小さく叫んで女の後ろに隠れてしまった。
「、お主の夫殿じゃ。隠れてないで出てきぃや」
「優姫、そんなに脅してもいいのか」
「紅輝、よいか、はいずれ朽木の跡継ぎを産むのじゃぞ。このくらいのことで恥ずかしがっていてはいかんと思わぬのか?」
紅輝は小さく苦笑した。
白哉の妻となる少女はおずおずといった様子で顔を出した。白哉と顔があうと顔を真っ赤に染めた。
「白哉、我が名は鳳凰院優姫、この子はというのじゃ。仲良くしてくれや」
「・・・・・・・・」
は小さくはにかんで笑った。今度は白哉の顔が真っ赤になる。
優姫と紅輝は顔を見合わせて笑った。
「さて、、我と紅輝はこの場から離れる。二人でいられるな?」
「はい、母様」
の声はまるで鈴の音のようだった。白哉は思わず聞き惚れる。
「では、また迎えに来るぞ」
「はい」
二人は白哉とを置いて姿を消した。途端に白哉は居心地が悪くなる。
「あの・・・・」
「はっはい!」
突然かけられた声に白哉は飛び上がった。は眼を丸くして白哉を見ていた。
「えと・・・・・」
「驚かせてしまってすみません。あの・・・・・何かお話しませんか?」
「話?」
「はい。好みの方とかもっと大きくなったら何をしたいかとか・・・・・」
「君は・・・・・誰か好みの人がいるの?」
「はい」
は間をおかずに答えた。幸せそうな笑顔で。
「母様のお知り合いの方なのですが、様という方です」
その名を聞いた瞬間白哉の瞳が丸くなった。
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