は呆然とした。炎は少しずつその勢いを弱めていく。

炎の中に何も残っていないことはわかっていた。愛しいものの体も一部でさえ。

瞬輝、黒珱をはじめとする零番隊員たちは皆死んでいた。少しだけ悲しそうな笑みをその顔に浮かべながら。

一体何がそんなに悲しいのだろう、とは思った。自分が死ぬことが悲しいのか、それとも・・・・・・・

なんにせよ自分たちには残っているものは何もない。

「香神よ」

振り向けば、山本総隊長がの後ろに立っていた。

「お前達も危険物質として排除しなければならん」

その言葉を聞いたの中で何かがドクンと脈うった。手の中にある四神を強く握った。

「排除・・・だと??」

「そうじゃ」

「・・・・ふざけるな・・・・・やれるものならやってみろっ!!」


を殺した者達に殺されるものか!!


の刀を山本は受ける。

「解放せずにわしに勝とうとするのか?」

「黙れっ!!」

叫びながら鬼道を放つ。山本はそれを片手で粉砕した。

「目覚めよ  “四神”!!」

の声にこたえ、四匹の獣が姿を現す。

を、皆を殺した者たちを喰らい尽くせっ!!」

の命に従い、獣たちは死神へむかっていく。死神たちは恐怖の叫びをあげながら、散り散りに逃げていく。

しかし獣の足に敵うはずもなく、死神たちは片っ端から喰らっていかれた。

やがてその場に生き残っている死神は山本総隊長と、朱音、香也だけだった。

「これほどの力を秘めておるとは・・・・」

「総隊長殿っ!」

「これは・・」

白哉の父、紅輝が駆けてきた。そして血まみれのを見て息をのむ。

・・・・・・」

「違う・・・・・」

「えっ?」

「私の名は香神だ・・・・」

俯かせていた顔をあげた、否、新たなの瞳は血色に輝いていた。

「私は新たなる香神家の当主。我が血の盟約を交わせし、斬魄刀よ。我が声に応え」

四匹の獣がの周りに集まる。

「それは・・・・・四神か」

紅輝は唖然とし、そして悲しそうに顔を曇らせた。

「私は新たな零番隊の隊長になる」

が小さくそう言い、紅輝をむいた。

「今までありがとう・・・・・さよなら」

に付き従うような形で香也と朱音も歩き出す。紅輝は彼らを止めるようなことはしなかった。

ただ彼らの行く道が茨の道でないことを祈った。

のちの記録には"零番隊 反逆罪にて全員処刑"とだけ書かれている。

零番隊の生き残りのことはふせられた。


「香也、朱音・・・・」

「はい」

「いずれ・・・いずれ時が来たらあいつを・・・・・たちを殺したやつを探し出そう」

「・・・・・・・はい」

「それまで、私の元で働いてくれるか?」

「・・・・・もちろんです。隊長」

二人の仲間の言葉には小さく微笑んだ。

それから百年以上後のこと、零番隊の面々が護廷十三隊の前に姿を現すことになる。


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