零番隊は護廷十三隊と対峙していた。零番隊の前にが、十三隊の前には山本総隊長が、それぞれ立っていた。
「山ジイ、なんのことだ」
「もう一度言わなければならないか、」
「なんのことだかさっぱりわからない」
「ならもう一度言おう。お前達零番隊はこの瀞霊廷を支配しようとしていた」
「・・・・・危険物質だって言いたいのか?」
「そうだ」
は黙ってしまった。いわれのないことだ。濡れ衣でもある。そんなこと・・・・・
「謀られたか・・・・・」
は数多くの死神の中に混じる、一人の死神をにらみつけた。その死神はの視線に気がつくとニヤリ、と笑った。
「・・・・仕方ない。誤解をとくしかないようだな」
「お前達がわし等に勝てると思っているのか」
「オレはこいつらを信じている。だから勝てる。いけっ!!」
の言葉で零番隊員が動き始める。十三隊の死神も動いた。
あちこちで斬魄刀の解放の言葉が叫ばれ、火柱があがる。
、瞬輝、黒珱、山本総隊長、各隊の隊長は動かなかった。
「山ジイ・・・・香神はこの瀞霊廷を命かけて守ってきた。それなのに本気で俺たちが裏切っていると思うのか?」
「、これは決定したことじゃ」
「・・・・・・・ちっ、何言ってもわからないか・・・・」
瞬輝と黒珱が刀に手をかける。
「いけ・・・・ただし死ぬな」
「はい」
二人は駆け出す。
「すさむことなき風 その名を神風 “風雅轍宵”!!」
「我が前に闇はなし “朝魏”!!」
瞬輝の周りに風が起こる。巨大な竜巻が死神を切り刻んでいった。
黒珱の刀が光の粒子へと変わる。他の死神は動きをとめた。
隊長たちが二人を迎え撃つ。しかしも総隊長も動かない。
「山じい、覚えておいてくれ。香神は・・・・・・・護廷十三隊を恨むと」
はそう言うと同時に腰の刀に手をやる。
「己の主の声に応えよ 我が敵今滅さん “龍汐”!!」
「万象一切灰塵となせ “流じん若火”」
炎同士の力がぶつかり合う。十三隊、零番隊を問わずその霊力の大きさに吹き飛ばされる。
は異変を感じて目を覚ます。何かが起こっている。
「・・・・・・・」
枕もとの四神をつかみ、香神の邸を飛び出す。
「!!」
二人の少年がかけてくる。の瞳が輝いた。
「香也!朱音!」
「何かが起こってる。零番隊舎のほうでだ。行こう!」
三人は瞬歩を使い、隊舎のほうへむかう。近づくごとに肌が巨大な霊力同士のぶつかり合いを感じ始める。
「・・・・・・・」
「瞬輝も黒珱も様子がおかしかった・・・・・きっと何かあるよ」
香也が言う。もうなづいた。それは気がついた。
「何か・・・・・・隊長!!」
三人は隊舎につき、目の前の光景を見て愕然とする。
あちこちでうめき声があがっている。半身がなくなった者、手足の失せた者、そして・・・・・
「!!」「瞬輝!」「黒珱!」
三人分の悲鳴があがった。血まみれの海に沈むのは大好きな三人。
「・・・・・おま・・・・えら」
が苦しそうに顔をあげて呟いた。瞬輝も黒珱も顔をあげる。二人とも驚きに眼が見開かれる。
「・・・・ばかっ!くんな、っつたろっ!!」
珍しいの怒声に三人の体がビクリとすくむ。は一歩を踏み出した。
「なんで・・・・・皆・・・・」
「ばか・・・・お前らに知られないようにしてたのに」
「の養い子たちか」
「手ぇ出すなっ!」
は力なく立ち上がる。がそばに駆け寄った。
「ばか・・なんできたんだよ」
「だって・・、私と夫婦になってくれるって言ったよ?約束を違えるの?私はを守りたい」
は半泣きになりながらも必死でそう応えた。の足から力が抜ける。
「そうか・・・・オレがここで死んだらお前は泣くんだろうな・・・・・・」
「決まってるよ」
「・・・・・じゃぁ・・・・・・オレが自分から死んだらどうする?」
「やだ・・・・死ぬなんて言わないでよ」
「・・・・・じゃぁ眠るだけだ」
「眠る?」
「そう・・・一時休む。俺たちはもう一回目覚めるんだ・・・それまで・・・」
の体の回りで炎があがり、の体が炎の外へ突き飛ばされた。炎の中にの体を抱きしめた妖艶な女の姿がある。の斬魄刀の姿だった。
「貴様が香神かえ?」
女はにそうたずねた。は首を縦にふる。
「からの言伝じゃ。しかと聞くがよい。
“我、香神は香神を新たなる香神家の当主とする”
だそうじゃ。何?もう一個じゃと?死にそうなくせに何を言っておる・・・・たく、愚か者が」
女はを軽くしかりつけるとのほうにむいた。
「香神の名と零番隊長の座をお前に、だそうじゃ・・・・・満足かえ?」
炎の中でがを見た。微笑んでいた。
「わがままなやつじゃ、お主は。これで最後じゃぞ・・・・・・・は永遠に我がもの・・・・と言っておる」
「・・・・・・・」
「・・・・もう息はない。そちらの三席と副官もなかろう」
見れば、瞬輝と黒珱に香也と朱音が取りすがって泣いていた。二人とも眼を閉じている。
「・・・・わらわはと血の盟約を交わした刀。お前が消えればわらわも消える・・・・・さらばじゃ、新たなる香神」
炎が一段と強さを増し、人影が消えた。
は喉がつぶれるまで叫んだ。叫びに叫んだ。尸魂界じゅうにその叫び声が響いた。
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