は緊張を隠しきれなかった。

今日は帯刀の儀が行われる日。朝からは準備があるからといって隊舎にはいなかった。

友人の香也と朱音も準備を手伝わされている。今日の主役はなのだ。

・・・・・大丈夫か?」

準備の間でもできたのだろう。がやってきて、の隣に座った。

・・・・・・大丈夫、と言いたいとこだけどちょっと怖い・・・・」

は優しくの肩を抱いた。優しく耳元で囁く。

「問題ない・・・・安心しろ。何があっても絶対に守ってやる」

は胸がキュッと締め付けられるように感じた。

「本当に守ってくれるよね?」

「約束する」

「うん・・わかった」

「よし、いい子だ」

は笑顔で言った。も緊張がほぐれたのか、はにかむように笑った。

「隊長、最終確認をお願いします」

「わかった・・・・・・瞬輝、のそばにいてやってくれ」

「はい」

と入れ替わるようにして、瞬輝がのそばにやってきた。

「瞬輝・・・・・」

「怖い?」

「ううん、が守ってくれるって言ったもの・・・・・だから怖くはないわ」

の言葉に瞬輝は頼もしさを覚えた。この少女はいつの間にかこんなに大きく成長している。

「そうね・・・・・・隊長がいれば・・・・・」

彼がいれば心配はいらない。何も心配することなどないのだ・・・・・・・

「ねぇ瞬輝・・・・私、のそばにいてもいいのかな?」

「どういうこと?」

瞬輝は首をかしげて、を見た。は小さく首をふる。

「私とじゃぁどうやってもつりあわない。は香神家の当主なのに・・・・・・・」

、隊長に告白されたでしょ」

瞬輝の言葉にの顔が真っ赤に染まる。

「なっなんでわかったの?」

「わかるわよ。とは家族なんだから」

「そっか・・・・・・・」

の肩を瞬輝は抱きしめた。は瞬輝を不思議そうに見つめる。

「ねぇ・・・私達全員があなたや朱音、香也を守りたいと思っているの。私たちの跡継ぎとして・・・・」

「跡継ぎ・・・・」

「そう・・・・私達はいずれ死んでしまうから・・・・・その前にあなたたちだけでも生き残って」

「瞬輝・・・・・」

「大好きよ、・・・・・私も黒珱ももちろん・・・・でもね一番あなたを愛しているのはよ」

「瞬輝、私も瞬輝や黒珱、のこと大好き・・・・だから死ぬなんていわないで・・・・・・私が守るから」

は瞬輝の肩に顔をうずめて泣き始めた。瞬輝も静かに涙を流しながら、の髪をすいていた。

、時間だ・・・・」

がそう言って迎えに来るとは涙を拭いて立ち上がった。

「いってらっしゃい」

「瞬輝は・・・?」

「私は行けないの。隊長と帯刀の儀の主役だけ」

瞬輝はの姿を見送った。

ゆっくりと黒珱が姿を見せる。

「いいの?瞬輝」

「何が?」

「隊長、取られて」

ならいいの。他の死神はだめだけどね」

うわ厳しい、と黒珱は笑った。そこで瞬輝の泣きそうな顔に気がつく。

「瞬輝・・・・・」

「だめなの・・・・・あの子の幸せそうな顔を見ていると・・・・死ぬのが怖くなってきて」

「・・・・・・じゃぁこう考えてみなって。俺たちは死んでまた生まれ変わるんだって。一度長い眠りにつくだけ。また起きるんだよ」

「眠る・・・・」

「そう・・・・一時お休みって・・・・」

瞬輝はしばらく考えてから小さく笑った。

「そうね・・・・・・・・・」

「うんそうだよ」

二人は小さく笑いあっていた。

別れのときまであと僅か・・・・・


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