黒の教団の門前に一人の青年が立っていた。その背中には巨大な太刀が背負われている。
彼もまた黒き聖職者の一人だった。
「またここに戻ってくるなんてな・・・・」
彼は戻ってきたくはなかった。幸福な思い出と悲痛の感情を味わったこの地に・・・
「兄貴のバカ・・・・・・」
彼は小さく呟くと門へ近づいていった。
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切り立った崖の上に一人の青年がマントを風に遊ばせ立っていた。
青年の髪は銀、そして瞳は青。彼はじっと遠くを見ていた。
「冬乃様・・・・・・もうすぐですよ。あなたと破壊者の出会いまで」
彼は視線を下に落とした。森の中の小道を太刀を背負った青年が歩いていた。彼の口元に笑みが浮かぶ。
「さぁシェル・・・・僕らもはじめましょうか」
風が吹き、青年の姿が消えた。
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冬乃は顔をあげた。
強い力が一つ、ここへ向かってきている。
「始まるのね・・・・」
冬乃は小さくつぶやいた。彼がここに来たときから物語りは始まる。
“世界の破滅”という題名の物語が・・・・
「ミシェルも感じているわね。そしてあなたも・・・・」
冬乃の言葉に呼応するように、一つ・・体の中で鼓動がした。
「さぁ・・・私たちもそろそろ覚悟を決めないとね」
冬乃の口に笑みが浮かんだ。
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