「!!!」
昌浩は必死でを目覚めさせようとしていた。
はただ浅く呼吸を繰り返すだけで目覚めようとしない。
「どうしよう・・・・・・・・・このままじゃ」
「落ち着くのだ、昌浩。とりあえず邸に連れ戻したほうがいい」
「うん、そうだね」
の体を六合に預ける。ぐったりとしたの体を背負い、六合は昌浩を見た。
本性に立ち戻った騰蛇が昌浩を抱えあげる。というか、担ぐ。
「戻るぞ。彰子とが心配しているだろうから」
なんだろう、この胸騒ぎは。
は彰子のそばにいながら思った。そばに穏形した禁鬼たちの気配も落ち着かない。
のそばに行けと言ってやりたいが、今彰子のそばを離れて行けなかった。
「彰子・・・」
勾陳の声が聞こえると、も彰子もほっと肩をなでおろした。
続いて、六合がを抱え塀を乗り越えてくる。続いて玄武だ。昌浩を抱えている。そして物の怪、勾陳と続いた。
気絶しているのか動かないを横たわらせ、六合は姿を消した。がのそばに近寄る。
「は?なにがあったのです」
「わからない。でもいきなりやってきたかと思うと、俺とか言ったり、神気を爆発させたり・・・・・・・」
「そんな・・・・・・・・完全だったはずなのに・・・・・・」
「?」
「・・・・・・・・・のほうはしばらく様子を見ましょう。昌浩は・・・・・」
彰子がそばにいた。
そんな彼らのもとに天一が厳しい顔で姿を見せる。
「天一・・・・・・」
「晴明様が・・・・・命の刻限が近いとのことです」
の顔が青ざめた。
昌浩も、物の怪も、勾陳も同じように真っ青になる。
“昌浩、気をしっかりと持て”
「今は冥府からの薬湯で命を持たせている」
「螢斗、翡乃斗・・・・・・・」
「まだ鬼籍帳に名は刻まれていない。そして晴明の天命もまだだ。まだ、助かる方法は見つかるかもしれん」
だから気をしっかり持て、というのだ。
昌浩がよく見れば、その体のあちこちに血が滲んでいる。
二人とも昌浩の視線に気がつくと軽く笑った。
「問題ない。ただのかすり傷だ」
“は・・・・・・・・・・危うい一線だったようだな”
「あともう少しだった・・・・・・・・・」
二人ともほっとした風情である。
昌浩が何故そこまで安堵するのか、と尋ねると二人して言った。
“昌浩、明日お前に話さなければいけないことがある。晴明に話したら衝撃でそのまま冥府に行きそうだから、お前と神将だけに話しておく”
「そんなに大事なこと?」
「今回ののことだ。お前たちに話さなければいけない・・・・・・・いつまでも隠しとおせるはずがないのだから。神将は全員だ。勾陳、明日の夜、集めてもらってもかまわないか?」
“無論晴明には天津神の護衛をつける”
「・・・・・・わかった。天空に話してみよう」
勾陳がうなずいた。
二人は僅かに気配を和らげを見た。まだ目覚めない。
「あぁそれと昌浩、これを受け取っておけ」
どこから取り出したのか、螢斗は瑠璃色の瓶を昌浩へ渡した。
それを見たの顔色が僅かに変わる。
「冥府の薬湯だ。よく聞く。飲め」
「螢斗・・・・・・・それは」
“速くよく効く。閻羅王太子から渡せと命じられた”
「我らが天狐の裏切り者と戦っている最中にな」
どこまでもお気楽なものだ、と螢斗はつぶやいた。
は苦笑するよりなかったのである。
そして薬湯を飲んだ昌浩が、噴出したのはもちろんであった。
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