は自分の呪いを受け止めた。
体半分を覆うようになった呪いは確実に"女としての"の命を削っていた。
は自室にこもっている。少し考えたいことがあるのだという。
晴明もも昌浩も神将たちも、螢斗たちでさえ何も言えなかった。

・・・・・・」
「何もいえませんわ。本当にあの子にかける言葉はありません」

が辛そうに言った。

「本当はとっても苦しいのに」


は褥の上で膝を抱えるようにして座っていた。
部屋の中は暗い。灯りがともっていないのだ。
から呪いのことを聞かされたときはひどく動揺した。もう一度女の姿をとるだけで、彼女は死んでしまう。
それが意味するところはわかっている。体半分を覆った呪いの傷は着実に彼女の体を覆いつくそうとしているのだ。
死ぬことが恐ろしいのではない。冥官であるにとって死とはもうひとつの運命の道にすぎないのだから。
ただ死んでしまったら、二度と行成に会えない。それが怖いのだ。

「馬鹿だな、私も」

小さく自嘲的な笑みを浮かべる。
と暗かった室内に灯りが射した。


「何の用」

優しく労わるような声には冷たい声を投げつけた。

「呪いのことを聞いた。見せてごらん」
「あんた達に見せたところでどうにかなるわけじゃないでしょう」
「いいから」
「私にかまわないでっ月読も天照も!私のことは放っておいて!!」

天照と月読はすべてを拒絶するようなに近づいて行った。


「来ないで・・・・」
「大丈夫」
「来ないで・・・・・お願い」

月読はを抱きしめた。
の瞳から涙が零れ落ちる。

「辛かっただろう?泣いてもいいんだ」
「・・・・んで・・・・・・なんで私は」
「・・・・・・・・」
「なんでこんな呪いがあるのよぉなんで私には普通が許されないの?!なんで。ねぇ月読、答えてよぉ」
「・・・・・・・」

月読は何も言わず泣きじゃくるを強く抱きしめた。

「なんで・・・・なんで、あんたたちはこの国の神さまなんでしょう?!なんで鬼ごときの呪いを破ってくれないの?!」
・・・・・」
「私は・・・・・・・・・・私は女であることを許されないの?」
、兄上が呪いを解く方法を見つけた」
「えっ」

の瞳が天照へと向いた。

「だが条件つきだ」
「条件・・・・・?」
「あぁ。お前が死後月読の妻となること」

の体が硬直した。
月読は切なそうな光を宿した瞳をへと向ける。

「なんで・・・・・私は死んだあと冥府の・・・」
「月読は冥府の上司でもある」
「・・・・・・・・いや」
、拒否をしては・・・・」
「私は冥官よっ!私は誰の妻にもならない!!」
「小野家と橘家の復興はどうでもいいのか」
「っ」

の顔が青ざめた。

「この条件を飲むのならば呪いと二つの家の再興を手伝ってやる」
「・・・・・・・・・・・・・」
「冥官でいたいというのなら許す。だから頼む、この条件を飲んでくれ」
「・・・・・・・てい」
「えっ?」
「最低!」

パンッと澄んだ音がして月読の頬がはたかれた。
月読は何も言えず驚いた顔をしてを見ていた。

「私はそこまでして助かろうとはしないわっ!男のままでいろというのならいてやるっ!」
・・・・・」
「だから・・・・・・・そんなこと二度と言わないで」
「・・・・・」

月読も天照も何も言わなかった。

「出てって・・もう来ないで・・・・・・私は私の力で生きてやるんだからっっ!」

一瞬にして二人の神気が消えた。
は腕に顔をうずめ肩を震わせる。
本当は呪いがとけるとしって嬉しかった。これで行成に思いを伝えることも可能であろう。
しかし今の彼女にとって何が一番大切なのかわかったのだ。
男としてもできることがある。確かに女でいれば小野、橘の再興も簡単であろう。しかしは胸の中に引っかかりを覚えていた。

「だめなんだよ・・・・・それじゃぁ」








強く、なれないじゃないか

7 9
目次