「客人?」
"彰子姫が今昌浩様の部屋に・・・・・・"
「まぁ大変。あっでも・・・・・・・」
ふと気配を探れば、とある気配が二つほど・・・・・・
そしてそれがなんのためなのか、気がつくとは微笑んだ。
「問題ありませんわ。でもとりあえず様子は見に行きましょうか」
そう言って立ち上がったは昌浩の部屋へ向かう。
簀子の下に神将の気配を感じた。庭に降りた緋乃はうなずいてみせる。
はそっと微笑むと、庭に降りた。
「藤の姫。どうなされました?」
「姫・・・・・・あの」
「陰陽生が一人昌浩を訪ねてきた。だから今は・・・・・・・」
昌浩の部屋を覗いたは息をのんだ。室内に体がひとつ転がっているではないか。
「朱雀・・・・・」
「ん、姫。どうした?」
「まさかそれは・・・・・・・・陰陽生?」
「あぁ」
「何故気絶しているのか、おたずねしてもよろしくて?」
「天貴に色目を使ったからだ」
はその答えを聞いて溜息をついた。もう何もいえない。
も人のことを言えた義理ではないが・・・・・
「神将は人を傷つけてはならないのでは?」
「安心しろ。殺してはいないから」
「天一も何か言ったら・・・・・・・」
天一はにこにこと微笑したままである。は溜息をついた。
「緋乃、弓狩・・・・・・とともに行動してください。すべてが動き出す前に、片付けなければいけません」
"御意"
「百鬼夜行か・・・・・・・そうとうおぞましいもののようだね、高於」
「お前がそういうのならそうなんだろうな」
「・・・・・・・・・聖域を穢すのは私が許さない」
狭霧丸が一閃した。の背後から伸びていた触手が断ち切られる。
耳障りな叫び声が聞こえた。
「何体?」
「二と言ったところだろうか」
「・・・・・・・・」
自身の体から噴出す霊力で、ひとつに結わえた髪が遊ばれる。
闇色の狩り衣の裾が翻った。
一瞬高於の目が細められる。ほんのちょっとだけ、の体から今までの力とは別のものを感じたからだ。
しかし、それはすぐに立ち消える。
「・・・・・・・・・・・話を聞いたほうがいいか・・・・・・・」
「ん?高於どうかした?」
「いいや」
はついと視線を闇の中へと向けた。
魂魄の気配がした。
「昌浩だね」
「のようだな・・・・・・・」
高於はの後頭部を船岩の上から見下ろした。その視線に気がついたのか、が怪訝そうな視線を送ってくる。
「、力が欲しいと思ったことはないか」
「あるよ、何度も。彰子が瘴気に囚われたり、窮奇に捕まった時もそう。結局人である私は弱いんだ。どんなに鍛練をしたって守りきれないときがある。そういうときに、私は力を望む」
「それが望まれない力であってもか?」
「それでも。私は私の守りたいものを守ることができるのならば修羅にだって堕ちる気あるよ」
「やれやれ・・・・凛々しいのはいいことだが、そんなことでは嫁の貰い手はなくなるぞ」
「結構です。私は戻るわよ」
「あぁ」
は一歩を踏み出し、空を見上げた。
「雪?」
灰色を含んだ暗い空から白いものがちらほらと舞い落ちてきた。
それはの掌に落ちるとすぐに解けてなくなる。
「こういうものを六花っていうんだよね。六つの花びらみたいに見えるでしょう?」
はそう言って微笑んだ。
六花の雨は静かに、地へと落ちていったのであった。
が貴船から出て行くと今まで紫の立っていた場所に二人の禁鬼が降り立った。
「なんのようだ」
「・・・・・・・・・・」
二人は何もいわない。
ただ静かに高於の事を見ていた。仮面の下に隠された表情は読み取ることができない。
「のことか?」
二人はすっと姿を消してしまう。
高於は呆れたように天を仰ぎ、そしてその姿を消したのであった。
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