神の神意とはなんなのだろか、と螢斗は主の寝顔を見ながら思った。
そして運命とは、星宿とはなんなのだろうか、とも考える。

貴船から帰ってきたは欠伸をこぼして眠りについてしまった。
そのあと直ぐ昌浩が帰ってきた。彼もまた寝ている。自分以外の魂魄をその身に持つというのはかなりの体力を消耗することなのだ。
しかも帰ってきたときにはその魂魄はなかったから、成仏させてやったのだろう。螢斗は昌浩の持つ力に少しばかりの恐怖を抱いた。

はどうですか」
"今は疲れて寝ているだけだ。問題あるまい"
「そうですか」

は螢斗の隣に腰をおろす。

「頑張り屋ですね、昌浩もも。私など足元にも及ばない・・・・・」
"・・・・・・・・"
「私がこの子たちにしてやれることはないのでしょうか・・・・・・・・」
"あるんじゃないのか?"
「・・・・・・・・そうですね」

は軽く笑うと部屋から去って行った。
緋乃と弓狩が姿を見せる。

"まがなりにも人か・・・・"
様は鋭いお方だ。いつ悟られるか・・・・」
「とっくの昔に知っておられるかもしれん・・・・・・」
"・・・・・・・・もとはといえば、緋乃、弓狩。お前たちのせいだろう。あれは絶対にあってはいけないことだった。お前たちだってそれを知っていたはずだろう?!"

緋乃も弓狩も何も言わなかった。

"わかっているのか!!こいつが生まれ、そしてこんな辛い宿命を負ったのは全てお前たちの責任だ!"
「わかって・・・・・いる」

搾り出すような声だった。
螢斗は口を閉じる。

「わかってはいる。だが・・・・・・だがどうすればよかった?私達は出会ってしまった。出会ってしまったものをどうやってとめろという」
「理を犯したことは認めよう。そしてそのせいでが辛い思いをすることになったことも・・・・・・・」
"なら、お前たちも何か動け!できるだろう"

禁鬼たちは首を振った。

「ムリだ。冥府を契約を交わし、禁鬼となった。は今、その力を封印されながら人として生きているのだ・・・・我らに手出しできるはずがないだろう?」

弓狩の言葉に間違いなどなかった。
間違いなどなかったからこそ、螢斗は歯を噛み締めた。

"天照に口止めされていなければ、すぐにでも言うものを・・・・・"
「いわないほうがいいのだろう。人とは違うということを・・・・・知ったらどうする?余計に辛い思いをすることになる」
「我らができることなど結局はほんの少し、の辛さを取り除くことだけだ」

緋乃はそう言って姿を消した。弓狩も後を追うように姿を消す。
螢斗は彼らがいたところをにらみつけ、そして嘆息するとを見た。
彼の主はまだ、健やかな寝息を立てていた。

"すまぬ・・・・・・"

小さく呟いて謝った螢斗もまた、姿を消した。
ゆっくりとの閉じられた瞳から涙が零れ落ちた。
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