「これがホグワーツ特急・・・・・」
黒髪の少年が赤い汽車を見上げていた。その胸元に銀のロザリオが光る。
四年前、とあるお嬢様の誕生パーティに行ったさい、そのお嬢様から再会の証として受け取ったものだ。
少年は愛しそうにロザリオに触れた。一目見て、あの少女が好きになった。
「・・・・・絶対に会えるよな」
少年―シリウス・ブラックは呟いた。
「よぉ」
シリウスの肩が誰かに叩かれる。振り向くとぼさぼさの黒髪にめがねをかけた少年が立っていた。
「君も一年?」
「あぁ。お前も?」
「そう。僕はジェームズ・ポッター。君は?」
「シリウス・ブラックだ」
「よろしく。よければ、一緒に乗らないか?」
「・・・別にいいさ」
二人は一緒に汽車に乗った。あいているコンパートメントを探す。
「シリウス、そのロザリオって何?」
ジェームズはシリウスの胸にかかるロザリオを指差した。
「あぁこれ?約束の印・・・・・みたいなものか」
「約束の印ねぇ・・・・」
ジェームズはにやにやと笑っている。
「なんだよ」
「女との?」
「・・・・・・・・」
シリウスは黙ってしまった。ジェームズはそんなシリウスの肩をばしばしと叩いた。
「わかるって。どんな子かは知らないけど。その子もホグワーツなのか?」
「多分。自信はないけど」
「おいおい、意味ないって」
「でも・・・・・きっと会えると思う」
「ほぅ、先ほどとは違ってたいした自信ですなぁ」
ジェームズの冷やかしにシリウスは少しばかり赤くなった。
「ところで・・・・・空いているコンパートメント・・・・ないよなぁ」
「そうだな」
二人は汽車の最後尾まで来てしまっていた。どこもいっぱいだ。
「おっ、人が一人いるけど他は誰もいない。ここにしないか?」
シリウスはジェームズに指されたコンパートメントを覗き込む。中にはフードをかぶった女か男かわからない者がいた。
「入ってみよう」
ジェームズの後に続いて、シリウスも入る。人の入ってくる気配に気がついたのか、その者が顔を上げて二人を見た。
美しい碧眼が二人をとらえた。
「お・・・・んな?」
「あなたたちは?」
澄んだ声がたずねてきた。声の高さから女だとわかる。二人はどぎまぎしながらも自己紹介をする。
「あなたたちも一年生なのね。私もよ・・・・・・・・もしかして席を探していたの?」
「あぁ・・・ここ、いいか?」
「かまわないわ」
彼女の許可を得ると二人は彼女の正面に腰掛けた。彼女はフードを目深にかぶっている。まるで髪の毛を隠すように。
ジェームズが少女に質問した。
「なんで、フードをかぶっているの?」
「髪の色が珍しいから・・・隠しているのよ」
「なんで?何色なの?」
「・・・・・・・銀」
「綺麗じゃないか。別に隠す必要もないと思うよ」
二人の会話にシリウスの心臓がはねた。銀の髪・・・・碧眼・・・・・それは記憶の中にある少女を思い出させるものだった。
知らず知らずのうちに胸のロザリオを握り締めた。
「名前は?」
「・・・・・・・・・・」
今度こそシリウスは驚いた。あの・・・・少女だ。このロザリオの持ち主、そしてシリウスの思い人・・・・
「あっあのさ・・・・・・これ、知ってるか?」
シリウスはロザリオをはずし、に見せた。はチラリとそれを見ると視線を外す。
「知らないわ。私、こんなロザリオ持ってないもの」
「えっ・・・・」
は首を振った。その時、コンパートメントの戸が開いて鳶色の髪を持った少年が顔をのぞかせた。
「、拾ってきたよ。転がっていってかなり前のほうまで行っちゃった」
「ごめんね、リーマス」
少年は中に入ってくるとの青色の輪を渡した。は足元の鳥かごを引っ張り出すと、白銀の梟を腕にとまらせた。
「シェル、首輪が見つかったわ」
はその輪を梟の首にかける。梟は首をかしげて、一声鳴いた。
「もう少し待っていてね。もうちょっとで着くと思うから」
梟を鳥かごに戻すと、少年がリオンの隣に腰掛けた。
「彼らは?」
「私達と同じ一年生。ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックよ」
「はじめまして、僕はリーマス・ルーピン。彼女とはここで始めて知り合ったんだ」
ルーピンは笑顔で言った。そしてのほうをむくと顔をしかめた。
「、そのフードはやめたほうがいいって」
「だって目立つもの」
「だめ。綺麗じゃないか」
「でもねぇ・・・・」
ルーピンはのフードをはずした。長い銀の髪がサラリとこぼれる。の顔が赤くなった。
「綺麗だって。のその髪。僕は好きだよ」
「・・・・・ありがとう、リーマス」
は照れたように笑う。日の光を浴びた銀の髪はその場にいるものを誰でも虜にしてしまうほどの美しさを持っていた。
「困るのに・・・・・・・」
「大丈夫、自信を持って」
「・・・・・・・・うん」
ほんの少しだけ空気が柔らかになったとき、コンパートメントの外に一人の少年が姿を見せた。
おじおじとしている。シリウスが立ち上がって戸をあけた。
「入れよ、どうせどこもいっぱいなんだろう?」
「えっでっでも・・・・・」
「かまいやしないよ。大丈夫だって、僕らも一年だから」
少年はおずおずと入ってきた。さすがに苦しい。
「アッ僕ピーター・ペティグリュー・・・・・よろしく」
「よろしくね、ピーター」
彼らはその後他愛ない話をして時間を潰した。
ポーっという汽笛の音で駅に着いたことを知る。
荷物を残し、彼らは駅に降り立った。
魔法への道を歩むために。
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