汽車が止まり、五人は降りた。
と、一人の女子生徒が彼らに声をかけてきた。
漆黒の髪と黄褐色の瞳が笑っていた。
「私、ファイン、ファイン・エッジ。あなた、シリウス・ブラック?」
「そうだけど」
「やっぱり!フォールッ!!」
ファインは誰かを呼んだ。途端シリウスの顔が青ざめた。
一人の少年がやってくる。たちは息をのんだ。シリウスにそっくりだったのだ。
「やぁシリウス。やっと来たな」
「悪かったな。どうせ俺のほうが一つ下ですからね」
「まぁそう怒るなって」
フォールはリオンたちにむいた。
「僕はフォール・ブラック。シリウスの兄だ」
「どっどうも」
「ん?そこのプラチナ・ブロンドの新入生は・・・・・・あぁ家の一人だね」
「はい」
「よろしく。頼りがいのない弟だけど、仲良くしてやってくれ」
「してやってくれ、は余計だろっっ!」
フォールとシリウスはどうやら正反対の性格のようだ、と四人は見ていて思った。
「さて、家の君」
です。
、我が弟のことを覚えていないかい?」
「?」
はフォールの言葉に首をかしげた。
フォールは銀のロザリオをに見せた。の顔が驚きに染まる。シリウスの顔もまたしかり。
「私のロザリオ!!」
「やっぱりね。実は僕ら、とある家のお嬢様の誕生パーティに呼ばれたんだ。そのとき、シリウスがこのロザリオを持ってきてね。問い詰めたらお嬢様から再会の証に受け取ったんだって」
はそのロザリオを手に取り、シリウスの顔をマジマジと見た。
「嘘・・・・・・」
「えっちょっと待て。このロザリオは・・・・・」
シリウスはロザリオを取り出した。二つのロザリオを見比べると、二つは似ているが中央にはめられている石の色が違う。
シリウスはフォールをにらみつけた。
「兄貴っっ!」
「とある人から梟便がきてね。頼まれたんだ」
の顔色が変わった。
「もッもしかしてその人って・・・・・・・・」
「今日、わかるよ。さて、僕は馬車に乗らないと。またあとでね・・・・・あっそうだ、皆グリフィンドールだといいね」
フォールは爽やかに去っていく。は石像と化していた。
ルーピンが心配そうに顔を覗き込む。
は自分を取り戻すと、笑顔で言った。
「ごめんね、シリウス。本当はあなただってわかってたんだけど、ロザリオが違ったから・・・・・」
「気がついていたのか・・・・・」
「もちろん」
彼らは一年生が集合している場所に向かいながら話していた。
「そういえばフォール先輩に梟便を送ったって人は・・・・・・」
「一番想像したくない人」
はげんなりとして呟いた。
あの人は本当にどこまで自分を追い詰めるか・・・・・
溜息をつかずにはいられないだった。

ホグワーツ魔法魔術学校に着いた一年生たちはこれから組分けの儀式だった。
、シリウス、ジェームズ、ルーピン、ピーターの五人は期待に胸を膨らませていた。
「同じ寮だといいわね」
「そしたら絶対に楽しいもんな」
「あぁ」
彼らの目の前に古い帽子が置かれた。
魔女が巻物を広げ、順繰りに名前を呼んでいく。
「ブラック・シリウス」
シリウスの名が呼ばれる。少しばかり緊張した様子でシリウスが壇上にあがり、帽子をかぶった。
しばしの沈黙が広間を満たす。
グリフィンドール!!
帽子は声高らかにそう告げた。シリウスはホッとした様子で帽子を脱ぐとグリフィンドールの席へかけていく。
シリウスとフォールが迎え入れた。

の名が呼ばれる。が帽子に向かって歩き始めると、広間中の生徒が彼女に注目した。
背中を流れ落ちる美しい銀の髪が蝋燭の炎を反射する。
は生徒の視線など考えていられなかった。目の前の教師席に座るとある人物を見つけたからである。
の体が硬直した。
「ミス・、どうしましたか」
「あっすっすいません・・・・・」
は視線をはずし、帽子をかぶった。
と、頭の中で声が聞こえ始める。
『ふむ、強い力を持っておる・・・・・・才能もある。そして・・・・・記録者の血筋か・・・・・・どの寮に入れても問題あるまい』
は声にどきりとした。
『スリザリンならばきっと成功する』
「スリザリンはやめて!」
はそう思った。
『ほぅ?スリザリンはイヤかね』
「あそこは多くの闇の魔法使い、魔女を出してきた寮でしょう?私は闇には落ちたくない」
『・・・・・・・よかろう、君の寮は・・・・・』
グリフィンドール!!
グリフィンドールの席でひときわ大きな歓声があがった。は帽子を脱ぐとシリウスの隣に腰掛けた。
フォールが笑顔で迎える。
「良かったね」
「はい」
そしてルーピン、ジェームズ、ピーターの三人も無事グリフィンドールに決まった。そして駅で出会った一年生、ファインも同じグリフィンドールになった。
「楽しい学校生活になりそうだわ。あれを除いたら・・・・・・・フォール先輩」
「うん?」
食事を取りながらはフォールに話しかける。
「梟便を送ったのはあれ、ですか?」
「・・・・・・・うん、あれ」
リオンの指差す方向を見たフォールはうなづいた。は盛大な溜息をつく。
「さて、ここで重大な話がある。闇の魔術に対する防衛術の先生に新しく就任した、ソルディア・先生じゃ」
グリフィンドールの生徒がを見た。は顔を真っ赤にさせる。名を呼ばれた青年は笑顔で、のほうに向かって手を振っていたのだ。
「何か一言あるかの、ソルディア先生」
「はい」
そのソルディアの一言で女子生徒から歓声が沸き起こる。
「・・・・・・はじめまして、これからよろしく、ホグワーツの生徒諸君。僕の名は呼びにくいだろうから、ソルド先生でかまわない。それと・・・・・・・グリフィンドールのは僕の妹だ。手を出したら承知しないと覚えておいて貰いたい」
は穴があったら入りたいと思ってしまった。シリウスたちが唖然としてとソルディアを見比べている。
「それじゃぁ生徒諸君、特に女子生徒の皆。仲良くやっていこうね」
笑顔のソルディアにさらに歓声が沸き起こる。
は既に悶絶していた。
?」
「前言撤回・・・・・・間違いなく、闇の魔術に対する防衛術だけは最悪なものになるわ・・・・・・」
授業にも集中できないだろう。ソルディアの容姿と声だけで・・・・・・
はまた一つ大きな溜息をついたのであった。

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