「はっ?」
キオは思わず目の前の同僚にそう言ってしまった。それほどまでに彼の言った言葉が衝撃的だったのだ。
「待て、浮竹。病床にあるはずのお前が出てきただけでもありえないというのに・・・・・・しかもどうやって香神を探し出した?」
「助けてもらったんだ」
「誰に」
「朽木隊長にだよ」
キオの額に青筋がたった。傍らで紀洸が、あーあ、という顔をしている。
浮竹は首をかしげて副隊長を見た。
「禁句です」
「あぁなるほど・・・・・」
キオは幼馴染であり同僚でもある朽木白哉が大嫌いだった。その名を言う(聞く)だけでもあまりの嫌悪感に鳥肌がたつほどなのだ。
隠居した理由の中にも、彼と二度と会いたくないということがあるのかもしれない。
「それで、どうかな。君の力を確かめるためにもいいとは思うんだ」
「だがな・・・・・・・・」
キオは眉根を寄せた。
浮竹が持ってきたものは、護廷十三隊の席官、副隊長、隊長の前で模擬試合をするものだった。
にとっては大変だが、十三人抜きをやるらしい。しかもいずれも上位席官だという。
「まだは修行をはじめたばかりだ」
「君が修行を行っているのなら大丈夫だろう。それに紀洸君や咲夜君も稽古をつけているというし」
それでもまだキオは心配そうだった。
そこをさらに浮竹が畳み掛けた。
「・・・・・・・・わかった。だが、が了承しなければいけないぞ」
「待っているからゆっくりとしてくるといい」
「・・・・・・・・・お前をさっさと隊舎に戻さないと三席の二人組みが怒って来そうだ」
浮竹はあははは、と笑う。キオは軽く溜息をつくと中庭へむかった。
今は恐らく咲夜と修行をしているはずだ。
中庭に着くとキオはを呼んだ。
「」
「はい」
「今度模擬試合があるんだが・・・・・・・お前と護廷十三隊の試合らしい・・・・・・・どうする、出るか?」
「えっと・・・・・・どのくらい強いんでしょうか」
「・・・・・・・・今のお前ぐらいか・・・・・・誰が出るのか知らないからな。なんともいえない」
は黙って俯いた。
「別に無理やりというわけではないぞ」
「・・・・・・・出ます。出させてください」
キオはの顔を見て、少し眼を見開いた。その瞳には強い意志があった。
キオは小さく笑うとうなずいた。
「わかった。じゃぁ修行を続けてくれ」
咲夜とは修行を再会した。
キオはそれを見てから、浮竹のもとへ戻っていった。
「浮竹、本人も出ると言った。そう伝えてくれ」
「わかった。じゃぁ俺は戻るからな」
「・・・・・・・紀洸」
「はい」
「送ってやれ。途中でぶっ倒れたら寝覚めが悪い」
紀洸はうなずくと浮竹とともに邸を出て行った。
キオは二人がいなくなると眉根を寄せた。
頭にくる幼馴染のことを考えた。確か桜香の持ち主は今の彼の許婚だったかな、と思う。
倖斗を呼んでそのことを確認すると彼はうなずいた。
「確かに鳳凰院紫苑は朽木白哉の許婚。上級貴族のひとつで鬼道の達人です」
「はぁ・・・・・厄介なやつが桜香を持ったな。で倖斗、何故紫苑があれを手に入れたかわかるか」
「もちろん、お任せを。すぐにあなたが欲しい情報を手に入れて見せましょう」
倖斗は笑って姿を消した。入れ違いになるようにして悠斗が姿を見せる。
「隊長、さっき聞いたんだけど御前試合的なやつ、あれ受けてよかったの?」
「何故だ?」
「だってを狙うやつがいるかもしれないじゃん」
「この邸にいるあいだは問題ない。それに普段から私たちがのそばにいるからな。さて、私は少し現世へと降りる」
「はい」
キオは現世へと降りた。古い友人の店へと足をむけた。
「浦原いるか」
「ん?こりゃ・・・・・キオさん」
店長の浦原はキオの姿を見ると笑った。
「ちょうどよかった。あなたに会いたい、てかあなたじゃなきゃ怒りが収まらないであろう人が来てるんですよ」
「・・・・・・はっ?」
キオはきょとんとした。浦原はキオの手を引いて見せの中に入って行く。
オレンジ色の髪をした青年とあともう一人、死神がいた。
「黒崎さん、彼女が先ほどお話した零番隊の隊長さんっすよ」
「・・・・・」
「浦原、まて。何があったんだ?ちなみに私は隊長職は退いた」
「てめぇが香神キオか?」
「いかにも」
「をどこにやった」
その一言でキオが合点が言ったようにうなずいた。
「そうだ。どこかで見た顔だと思えばお前はとともに虚を昇華していた小僧じゃないか」
「てめぇ!」
「待て、一護!」
「止めるなルキア!こいつのせいでがいなくなったんだ」
「確かにを連れて行ったのは私だが。別に殺すつもりで連れて行ったのではないぞ」
「じゃぁ何故だ!何故を連れて行った!!!」
「浦原、こいつはのなんなんだ?」
「・・・・・・・・恋人っすよね、黒崎サン?」
「てめぇにゃぁ関係ねぇだろ」
キオはフッと笑みを浮かべた。
「なるほど・・・・・なら今死神として修行しているところだ。しばらくしたら連れてきてやってもいいが?」
「だから何故を連れて行ったんだって聞いてるんだろう!!」
「・・・・・・現世を滅ぼしたいのか、貴様は」
「なっ・・・・どういうことだ?」
「浦原、説明頼んだ。私はもう戻る」
「はいはい」
「ちょ・・・待て!おい、てめぇ!!」
「キオ、だ。その名で呼ばなければお前、に会わせてやらんぞ?」
キオはそう言って笑うと姿を消した。
浦原は怒る一護をなだめ、桜香のことを話した。
一護は唖然とした。もちろんルキアもだ。
「さんの心配はいらないと思いますよ。キオさんがむざむざさんを死なせることはしないと思いますし」
「なんでそんなことが言えるんだよ」
「キオさんだからっすよ。護廷十三隊を束にしたよりも強いといわれたあの零番隊を束ねる人っすからね」
「零番隊ってそんなに強いのか・・・」
「えぇ」
「・・・・・・・・ならを預けても心配要らないか・・・・・」
「えぇ。でも・・・・・・・今はあちらに行かないほうがいい。あなたのような霊力の強い人が一番に狙われる。桜香が目覚めたら・・・・・ね」
浦原は扇で口元を隠すと小さく笑った。
「問題なしっすよ。さんはすぅぐに帰ってきますって」
「わぁったよ」
「さて黒埼さん、次の仕事いいっすかね」
一護はまたかよ、と机に突っ伏した。
ルキアと浦原はその様子に笑みをこぼしたのであった。