後悔したくないから
闇に生きていた。親もなく、仲間もなく、手を血で汚しながら私は生き抜いてきた。

頼る人なんているわけがない。私は一人なのだから。

どんな人生だったかって聞かれれば、きっとこう答える。



"後悔ばっかしていたな"



って・・・・・。

でもラビに会ってそれは変わった。後悔なんてしたくない。ラビのそばで、笑っていたいと思えるようになった。


、なにやってるさ?」

首をかしげてあなたは私の名前を呼ぶ。エクソシストだというあなたは世界を救うのだと言っていた。

「ほら、あの川。日の光を反射して光ってる。綺麗だなって思って」

あなたは私の隣にしゃがみこんで、同じように川面を見つめた。ふとあなたの横顔に見惚れる。

?俺の顔に見惚れてどうしたさ」

「あっううん、なんでもないよ」


アクマに襲われていた私をあなたは助けてくれた。


"大丈夫さ?"


あなたの明るい笑顔も私を呼ぶ声も大好き。

でもきっとあなたは知らない。


、今日ここで祭りがあるって知ってた?」

「うん。毎年やってるよー。そっか、もうそんな時期なんだね」

「ここに住んでるのに知らなかったんさ?」

「今まではお祭りなんかと縁のない生活だったから・・・・・・」

「じゃぁ一緒に行くさ。俺もこの町にいられるの今日までだし」

「えっ・・・・・」


驚いた。あなたがいなくなってしまうと知って。

まだ行ってほしくなかった。まだ何も言っていないのに。


「ラビ・・・・・」

「ん?」

「あのね・・・・・」


いざとなったら言葉が出てこない。笑顔で首を傾げるラビに想いを伝えることができない。


「ごめん、なんでもない。じゃぁ・・・・」

「あっ?!」


引き止めるラビの声が聞こえたけど私は振り向かず家へと戻った。

結局後悔するんだ。私はなにをやっても・・・・・


翌日の祭りの日、私は家の窓から賑やかな通りを眺めていた。

今日、ラビは帰ってしまうのだ。私は思いを伝えられず、また後悔する。


「愛してるって・・・・」

!!」


ふとラビの呼ぶ声が聞こえた気がした。そんなことあるわけない、ラビは・・・・・。

下を見て、私は目を見開いた。見慣れたオレンジ色の髪が私に向かって手を振っている。


、一緒に祭りに行くさー」

「なんで・・・・なんで」

「早く来るさ」


もういてもたってもいられなかった。私は急いで着替えるとラビの元へとむかったのだ。


「なんで家がわかったの?私教えてないのに・・・・」

「愛の力ってやつ?」


ラビはそう言うと私の手を握って歩き始めた。

いろんなところを見ていたけど、そのとき楽しい時間はすぐ終わるのだと知った。

気がつけばもう夜更け。祭りの最後、花火が打ち上げられる。


「ねぇラビはいつ・・・・・・ここを発つの?」

「そうさねぇ・・・・・・花火見てからかな?」

「えっ・・・・・」

、ありがとうさ」

「なんでラビがお礼を言うの。お礼を言うのはこっちのほうなのに・・・・」

といれて楽しかったから。それともと俺といて楽しくなかった?」

「そんなこと・・・・あるわけない」


私の目から知らず知らずのうちに涙が零れ落ちていた。

ラビは優しく涙をぬぐってくれた。


「俺、のこと好きさ・・・・・・は?」

「・・・・・す・・・・き」


ラビは私の声を聞いてニッコリと笑った。


「よかった」


私たちの唇が重なった時、ちょうど花火が打ちあがった。


「これでさよならはけっこーきついさ・・・・でもまた会えるから」

「ラビ・・・・」

「ありがと、。バイバイ」


その言葉を最後にラビの姿が遠くなる。人ごみに紛れていくオレンジ色。私はそれを必死で追った。

もう後悔なんてしたくなかった。もう泣きたくなかった。そばにいたかったのに。


「ラビッ!!」


声は届かなかった。でも諦めない。

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