高天原、月読は水鏡を通して下界の様子を見ていた。彼の傍らに兄である天照が座る。
「様子はどうだ」
「中々に面白いことになっていますよ、兄上」
「お前のあのお気に入りの人間は」
「少し無茶をしたようですね。あとでちゃんと叱りに行かなければ」
月読は面白そうにクスッと笑った。天照は軽く溜息をつく。
「ひとつのことが終った・・・・・・だがこれで終わりではあるまい」
「えぇ。まだまだ、彼らにはやるべきことがありますからね」
月読が水鏡を一撫ですると映っていた景色が変わった。どこかの岩壁である。
「封印が弱まっている・・・・さて、あの血塗れの神将はどうなるのでしょうか」
「お前も余計な手出しはするなよ」
「考えておきますよ、兄上」
クスリと笑うと月読は水鏡の映像を消した。
「私は仕事に行ってまいります。それでは」
月読はその場から歩き去っていく。天照は唯一人その場に残ってもう何も映っていない水鏡を見つめていた。
「燎琉様」
「、お帰り」
「ただいまですわ」
は燎琉に抱きついた。背後に控えていた禁鬼たちは苦笑を漏らす。
「緋乃に弓狩もお疲れ。しばらくは休んでもいいよ。特に用事はないから」
緋乃と弓狩の気配が消える。と燎琉はしばらく見つめあうとどちらからともなく口付けを交わした。
「・・・・・・寂しかった」
「もう、燎琉様の甘えん坊・・・・・・・でもまたしばらくは一緒ですわ」
「またしばらくねぇ・・・・・・・・次はどのくらい続くのかな」
「わかりませんわ。それを知っているのは天帝のみですもの・・・・・」
だから、とは燎琉の耳元に唇を寄せた。
"ゆっくりと愛してくださいませ"
燎琉はその言葉に微笑を浮かべると、を抱き上げた。
「きゃっ」
「その言葉、あとで後悔なんてしないように」
「しませんわ」
互いに笑みをこぼした二人はまた口づけあった。今度は長く、深く。
ほんの少しだけれど離れていた時を埋めるように・・・・・・
まだ物語りは終らない。
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