白い着物に包まれたの肌には蔓草の模様が彫りこまれていた。
は今、熱にうなされている。それをが看病していた。
「、少し休むといい」
「いいえ。は私の咎を負ったのです。私が看病しなくては・・・」
「そうは言っても何日も眠っていないじゃないか。無理やりにでも寝かせるけど?」
「・・・・・・・・」
「今、緋乃と弓狩がの現状報告を晴明にしているところだ。君も戻ったほうがいい」
「・・・・・・・・わかりました。は?」
「禁鬼たちが交代で看てくれるそうだから安心して」
「はい」
は一度の顔を見てから上へと戻った。
燎流は部屋の入り口に目をむける。そこに金色の髪をした一人の鬼が姿を見せた。
「のこと、頼んだよ」
「かしこまりました」
燎流も執務室へと戻っていく。
禁鬼はのそばへ寄って行った。
「様・・・」
「ン・・・・・・・・・・・・・・・れ?雷信・・・・・・」
「お久し振りです。最後に会ったのはあなたがまだ赤ん坊のころだったと思いますが?」
「覚えてない・・・」
雷信は唯一見える口元に柔らかい笑みを浮かべた。
「気分はいかがですか?」
「なんとかね・・・・・・・・は?」
「上に戻られましたよ」
「そっか・・・・・・・私も戻らないと」
「そうですね、ですがその前に薬湯は飲んでいただかないと」
雷信の差し出した瑠璃の椀を見た瞬間、の顔が恐怖に引き攣った。
雷信の笑みはキレイだ。しかし、薬湯の色は不気味だ。
「まだ少し熱があるでしょう。お飲みになられたほうがよろしいかと思いますが?」
「これ飲んでも死なない?」
「大丈夫です。あなたはこれを飲んだところで死ぬようなほどやわではないでしょう?」
何気に雷信の言葉が毒を含んでいるように思えるのは気のせいだろうか。
「熱のせいで味などまともに感じないはずです。どうぞ、ぐいっと」
「・・・・・・・・・・・・雷信、あなた燎流と同じ性格しているわね」
「それはありがとうございます」
「別に褒めているわけじゃないわ・・・・」
はためいきをつくと、薬湯をあおいだ。
苦味がひどい。さらに改良が加えられているらしい。
顔を青ざめさせながらは飲み干した。雷信は満足そうである。
「あ゛〜〜」
は寝台に倒れこんだ。喉元過ぎれば熱さ忘るる、である。
まだ苦味がほんのちょっと残っているが、じきに消えるであろう。
「疲れた・・・・・・・・」
「ではもう一休みいたしますか?」
「ううん。もう戻るよ。一度晴明に報告だけはしておかないと」
「わかりました。では燎流様にはそのようにお伝えしておきます」
「ありがと。じゃね、雷信」
は都へと戻って行った。雷信はそれを笑顔で見送ったのであった。
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