夢の終わり
日番谷は前を歩く幼馴染と恋人の姿を見つけた。

「雛森、
「シロちゃん!」
「"日番谷隊長"だ」
「どうしたの?」
「お前たちこそ。今は勤務中のはずだろう?」

二人は日番谷の言葉に顔を見合わせた。

ちゃんのお薬もらいに」
「行くのか?」
「行ってきたところ」

見れば雛森の手には小さなビンがあった。
中に入っているのは無色透明な液体。
日番谷が顔を上げ、を見る。彼女は小さく笑っていた。

「具合はどうだ?」

は指で丸をつくった。調子がいいということだ。
幼い頃に引いた風邪のせいで声が出せなくなったは死神となってから、四番隊に薬をもらい少しずつだが回復していた。
穏やかな光をいつもたたえた紫苑の瞳が日番谷は好きだった。

、仕事が終わったら十番隊にこい」

は嬉しそうにうなずく。
いくら恋人でもそう上手く同じ隊には入れない。
は六番隊の席官だった。

「それだけだ。さっさと戻れ」
「シロちゃんもね」
「日番谷隊長だ!」

二人はクスクス笑いながら自分の隊に戻っていく。
日番谷はその姿を見ると背をひるがえし隊に戻ろうとした。
と、誰かにぶつかる。

「大丈夫かい?」
「・・・・・藍染か」

立っていたのは雛森の所属する五番隊隊長藍染だった。
日番谷は眉根を寄せた。

君、随分と元気に鳴ったようだね」
「あぁ」
「やはり彼女の声を一番に聞けるのは君だろうね」
「・・・・・どうだか」

藍染は小さく笑みをこぼした。
日番谷はそんな藍染を睨んだ。

「あいつに何かしてみろ。ただじゃおかないからな」
「・・・・・・日番谷君、くんをちゃんと守ってあげないといけないよ。彼女に何があるかわからないからね」

藍染は笑みで言った。日番谷は去っていく藍染をじっとにらんでいた。
藍染のその言葉の意味を日番谷が知るのはしばらくのちのことになる。
が仕事を終えて、十番隊の執務室にやってきた。

「入れ」

扉の前に立つと霊圧でも読んだのか、日番谷が中でそう言った。 は部屋の中に入っていく。奥の机に日番谷が座っていた。
は常に持ち歩いている紙と筆を取り出して何か書き付けた。

『乱菊さんは?』
「勝手に上がりやがった」
『まだお仕事残ってる?』
「・・・・悪い。お前を呼んだのは俺なのに」

は小さく笑いをこぼした。日番谷はを招き寄せると抱きしめた。
二人の背はあまり違わず、互いの頬が触れ合った。

・・・・・好きだ」

の瞳が一瞬揺らめいた。

「お前のことは俺が守る。絶対にだ」

も日番谷をそっと抱きしめた。互いの温かさが心地よく、日番谷は眼を閉じた。

「どこにも行くな、

は日番谷の言葉に笑顔でうなずいた。
それからしばらくは十番隊の業務を手伝っていたが一人で家に帰ることにした。

「気をつけて変えれよ」
『冬獅郎もだよ?体、壊さないでね』
「わかった」

は日番谷の頬に一つだけ口付けを落とすと家に戻る。
その日がの姿を見た最後の日となった。

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