「面白そう・・・・・・・」
「おまえなぁ・・・・・」
「なによ、別にいいじゃない。昌浩と晴明の頼みなんだから」
「別にいいが・・・・・・」

暗闇の中で男と女は話していた。
女の手の中に淡く光る水晶が握られている。

「いっておいで。お前たちの未来へ」

女は足元の川にその水晶を落とした。
ゆっくりと水晶は沈んでいく。


勾陳と天空、それに太裳は水鏡を通じて下界の、彼らの主を見守っていた。
安倍晴明、安倍昌浩、それが彼らの主である。
彼ら二人はもう既に死んでしまった。もう千年以上も前のことである。
彼らは死ぬ直前、前世の記憶を珠として封じ込めた。それは冥官の手によって産まれてきた子供たちの中に埋め込まれた。

「あの娘も度胸あるな」
「しょっちゅう上司は怖いと言っていましたが・・・・・」
「楽しんでいるのだろう。あの娘、境の川を通じて人界の様子を見ておる。晴明や昌浩のことを」
「楽しみがなくなるからか・・・」
「でしょうね」

安倍晴明と昌浩は兄弟として産まれていた。
今現在晴明は20歳、昌浩は14歳である。霊力もある二人は各地から寄せられてくる霊の情報をもとに悪霊退治を営んでいた。
もっとも昌浩は14歳で中学二年生である。悪霊退治は休日に限られていた。

「さて・・・・・勾陳、太裳。下に降りるとするか」

天空は十二神将を従え晴明たちのもとへと降りていった。