安倍に仕える禁鬼、緋乃と弓狩は主の友人小野のことを哀れに思っていた。
遊ばれているのだ。上司とその妻である友人に・・・・・
「むしろ退屈しのぎ、か」
緋乃はそう呟いた。傍らにいた弓狩もうなずく。
「生きてきた年月が違いすぎる」
「確かに・・・・・」
"言いたい放題だな、禁鬼たちよ"
「・・・・螢斗、翡乃斗か」
の式神がやってきた。
黒狼の姿をしているが実は光神で天照大御神の配下螢斗
小さな黒い物の怪の姿をした、闇神、そして月読命の配下翡乃斗
忠誠心のあつい式神たちだ。
本当の姿は眉目秀麗な青年達だ。しかしそのままでは神気が強すぎるという理由から物の怪の姿をとっている。
「そういえば緋乃、東三条殿の姫が襲われたと聞いたが・・・・」
"翡乃斗はいなかったのだな・・・・・あぁ、この国の妖ではないな"
「それは先ほど報告に行った事だ」
「むしろ西方の妖・・・・・・」
二人と二匹は考え始めた。と弓狩が顔をあげる。緋乃も少し驚いたような顔をしていた。
「どうした?」
「燎流様が様と様を連れて来いと・・・・」
「では我らは都の警備にまわるか」
"あぁ"
螢斗と翡乃斗の姿が消えた。緋乃と弓狩は主たちのもとへ急ぐ。
要件を告げたのち、彼らは冥府へと降りて行った。
は燎流のことを毛嫌いしている。
なぜなら毎度顔を合わせるたびに苛められているからだ。
さらに燎流とその妻、の果てしない会話に付き合わされるはめになるからだ。
「あの二人に仕えてる緋乃と弓狩の辛さがよくわかるわ・・・・」
と以前はぼやいていた。
そして今回もまたは燎流に苛められていた。
が、今回はちょっとだけ反抗する。少しだけレベルアップしたところに関しては禁鬼たちは感心した。
効果はなさそうだが・・・
そして相変わらず燎流、、の三人組みは話がそれていくのだ。
「コホン、それで用は?」
弓狩が話を元に戻す。
「あぁ忘れていた」
忘れるなよ、と禁鬼は同時に思った。大事な話だったら困るじゃないか。
燎流は上は危険だから、冥府にいろとに言う。は殺しても死なないから、とも。
禁鬼たちは上司の言葉に怒ったを抑える羽目になった。はその言葉に相当怒ったのか燎流に反撃した。
これは効果抜群だったようだ。燎流は部屋の隅でいじけ始めた。
一瞬・・・・ほんの一瞬、禁鬼たちは仕える主を間違えたのではないだろうかと思った。
「様・・・・・・」
緋乃が止める。
「燎流様・・・・・と私のことを信じてくださいませ」
は微笑んで言った。燎流は溜息をつく。
「仕方ないね・・・・・」
「私先上戻る」
は先に上へと行ってしまった。
燎流の目が禁鬼たちのほうへとむく。
「二人を頼んだよ」
「我らの命に代えても」
仕える主を間違えたとは思わない。
自分たちの意思によって輪廻の環をはずれ、彼らに従っているのだから。
彼女のそばにいることが、辛い思いをさせてしまったことの報いになるだろうから。