私がリドルを失ってから三年の月日が経った。はじめはリドルが兄が殺したということに呆然となっていた。
それでもリドルは私が愛した人なのだ。怨めるはずもない。
私は夫をもらい、二人の子供に恵まれて幸せに暮らしていた。二人の子供の年長のほうは、私とリドルの子だった。
「リドル・・・」
私はその子にリドルと名をつけ、時たま親子で散歩に出た。もちろん行く先は私とリドルが出会ったあの公園だ。
「ここであなたのお父さんと出会ったのよ」
「パパと?」
「そう」
彼は興味深そうに公園を見回した。私はリドルのいた場所に近寄る。
リドルの幻影が見える気がする。
「リドル・・・・・・・・・・・」
私はそっと涙をこぼした。
"リドル・・・・・・・・・"
リドルは名前を呼ばれたような気がして背後を見た。
傍らを歩いていた仲間が不思議そうな顔で立ち止まったリドルを見た。
「リドル?」
「・・・・・・・・いや、なんでもない」
きっと彼女は自分以外の男をもらって幸せになっているだろう。
何人もの人を、そして彼女の兄を殺した自分がそばにいては得られるものも得られなくなってしまう。
彼女といた日々がとても懐かしかった。そして自分の中のもう一人の自分がもう一度会いたいと願っていることに気がついた。
「会いたい・・・・・・・・・・・・」
""
は顔をあげた。リドルが不思議そうな顔をして母を見上げてくる。
「・・・・・・・リドル」
「なぁに?」
「いえ、なんでもないのよ。さて帰りましょうか。パパが待っているわ」
「うんっ!」
リドルは笑顔でうなずくと家への道を走って行く。はそれを見ると笑みをこぼした。
風がの髪を揺らしていく。は風の行く道を見た。この空の下、太陽が照らすどこかにきっとリドルがいるのだろう。
きっとリドルのそばには誰かがいてくれるはず。自分じゃなくても、もう彼は一人ではないのだろう。きっと自分がいなくても彼は笑っている。今の自分がそうであるように。
「リドル、あなたはずっと私の中で生きています・・・・・・そして、愛しています」
は空にむかってそう言うと息子のあとを追って行った。
「、君は幸せに笑っているだろうね」
リドルは月を見上げながら言った。月は冷ややかな光を地上へと落としている。
彼女のそばにはリドルよりも彼女を幸せにできる男がいるはずだろう。自分じゃなくても彼女はもう一人ではない。自分でなくても彼女は愛し愛されているのであろう。かつての自分がそうであるように。
「・・・・・・君の事をいつまでも愛している。たとえこの身がひとりであろうとも、僕自身はひとりではない。どうか、君の行く道が幸福に色取られますように」
あなたを
君を
いつまでも愛しています
ひとりぼっち