淡い花の香
、人の話を聞いているかい?」
「えっ、えぇ・・・・・・すみません、兄様」
「友雅殿が気になる」
「そっそんなことは・・・・・」

口では否定するが、の頬は僅かに上気している。
鷹通は僅かに嫉妬心を感じた。

「今日はこのぐらいにしておこう」
「そんな・・・・・」
「集中できないだろう?」
「・・・・・・・えぇ。せっかく兄様の貴重なお時間をいただいていますのに」

のうつむいた頭を鷹通は優しく撫でた。

「おやすみ」
「はい」

鷹通が姿を消すとは庭の桜へと目をやった。

「もう兄様はいませんわ」
「知っていたのかい」

桜の陰から姿を見せたのは友雅である。

「文は読んでくれたようだね」
「はい・・・・たった一夜の夢を、と思いまして」

の部屋にあがった友雅は華奢な腰を引き寄せた。

「たった一夜といわず、何度でも見せてあげるよ」
「嘘・・・・友雅殿は気の多い方。何人の女性方が泣かされたと思ってますの?」
「これはこれは・・・・・」

友雅は僅かに眼を見開く。はクスッと笑った。

「泣かされると知っていてあなたを好きになってしまった」

悲しそうな笑みだった。
友雅はそれを見て、を抱くのをやめた。
ただを抱き締めて夜を過ごした。友雅に抱き締められながらはつぶやいた。

「友雅殿は私のように学問に興味のある女はお嫌いですか」
「いや。いいと思うが?」
「私個人のことは?本音で教えてくださいませ」

友雅は考えた。の瞳は真っ直ぐに友雅にむいていた。
その瞳に吸い込まれそうになった。

「君のそばにいたら、私は・・・・・・・」
「もしも愛してくださるのなら・・・・・百日通ってくださいます?」
「百日通いか・・・・」
「無理は申しません。イヤなら・・・・」
「いえ。姫、あなたが望むのなら」

友雅とは唇を重ね合わせた。
そして翌日から友雅の百日通いがはじまった。
友雅はやってくると笛を奏でた。はそれを聞きながらうっとりと目を閉じた。

それは百日通いがはじまって九十日目のことであった。

「」
「兄様?厳しい顔・・・・どうなされました」
「ご両親たっての願いだ・・・・・十日後、後宮に入って欲しい」
「えっ・・・・」

は瞠目した。
の両親は彼女は後宮に入ることを望んでいた。
大好きな両親が最後に望んだことだった。

「帝は・・・・・ご存知なのですか」
「あぁ・・・・」

は眼を伏せ言った。

「わかりました。後宮に入ります・・・・でも兄様、一つだけ願いがあります」