微笑みに星のカケラを
ふと渋谷有利は話し声に顔をあげた。 手の中にあった野球ボールがぽとんと地面に落ちる。 「陛下?」 「陛下って呼ぶな、名付け親」 「はい。それで、どうかしましたか?」 コンラッドがたずねてくる。有利は首をかしげた。 「ん、いや・・・・・誰かに見られている気がして」 「・・・・・あぁ、、陛下が視線を感じているが?」 コンラッドと柱のかげから一人の少女が姿を見せた。 アメジスト色の瞳を持った少女だった。 「君は?」 「・・・・・・ジオラルドといいます、陛下」 「・ジオラルド・・・」 「はい」 「ユーリ、彼女はヨザックの幼馴染です。そして・・・・恋人、かな?」 「コココ、コンラッド!私達はそういう関係では・・・・・」 顔を赤くして慌てる彼女にコンラッドは近づいて行った。 怒って頬を膨らませたの頭を軽く叩くしぐさはどこか、仲のよい兄妹を思わせる。 「ユーリ、彼女に城下を案内してもらってはどうですか?」 「私が?でも・・・」 「大丈夫。ユーリは気さくだから」 そういう問題では、とは溜息をついた。 ユーリを見れば期待感たっぷりの様子である。 これは断れない。そう察したは微笑んだ。 「わかりましたわ。ご案内します。でもコンラッド?」 「わかっている。城にいると思うからすぐに呼んでこよう」 「ありがとうございます」 は嬉しそうに笑った。 ユーリは不思議そうにコンラッドを見る。 「門のところにいますわ」 「あぁ」 「陛下、参りましょう」 「うん」 は栗毛の馬とユーリのアオを引っ張って門まで来た。 「坊ちゃん、」 「ヨザ」 の声音に僅かに嬉しさが混じった。 馬から下りて、グリエ・ヨザックのもとに寄って行く。 「まったく。なぁんで、坊ちゃんを見ていたわけ?」 「あら、ヤキモチ?違うわよ、陛下とコンラッド、いい仲だなって」 「ふぅん・・・・坊ちゃん、よかったですね〜の人を見る目は確かですよ」 「そっそんなこと・・・」 「昔っからが見てきた恋人たちは成功してますからね」 「してないよ〜」 は軽くヨザックの頬を叩く。 「痛い・・・」 「痛くしてないよ。もう、はやく行かないと日が暮れる」 「はいはい。では陛下、参りましょうか?」 ヨザックとにはさまれながら、変装したユーリは城下を馬で歩く。 「!」 「おはよう」 は声をかけてきた少女のもとへ馬をむけた。 「おばあさんの調子はどう?」 「がくれたクスリでよくなったよ」 「そう、それはよかった」 「ありがと、」 「どういたしまして」 その様子を見ながらユーリはヨザックに話しかける。 「なぁなぁヨザック。ってなにやってるの?」 「それはですね〜病人治療ですか。はクスリを作るのが得意だから」 「クスリ?」 「痛み止めとか、風邪薬とか。しょっちゅう作ってますよ」 「それで城下の人に・・・・?」 ヨザックはユーリの言葉にうなずいた。そしてを見る。 その目は驚くほど優しかった。 「昔、クスリを作っていた彼女の母親が人間に連れて行かれたんです。俺は純粋の魔族だっ たの家で暮らしていました。の母親もすごく優しくて・・・本当の家族みたい だった。自身も母親にクスリの作り方を習って、一生懸命でしたよ。いつか王都に行っ てたくさんの人を助けるって言ってました」 「へぇ・・・・って頑張りやなんだ」 「頑張りやだから・・・俺がそばにいないといけないんですよ」 「?」 ユーリは不思議そうにヨザックを見た。 「彼女は誰よりももろく、弱いから」