血に濡れた瞳
私の好きな人はヴァンパイアだ。 「枢様」 「・・・・。優姫は?」 「・・・・・理事長に呼ばれています」 「そう、ありがとう」 純潔のヴァンパイアであるあなたは私などには興味ないでしょう。 あなたが求めるのは私の妹だから・・・・・ 「枢様・・・・・あの」 「うん?」 「・・・・・いえ、なんでもありません」 ゆっくりとあなたの指が私の顎にかけられる。 俯いて、下にあった視線が上にむけられる。 「何か言いたいことがあるのなら、早く言った方がいい」 「枢様・・・・・」 何故だろう。あなたを愛していているのに、こんなにも恐怖を感じてしまうのは。 「・・・・・・・私をおそばに置いてください」 「ヴァンパイアでない君を?」 「はい・・・・・・」 「・・・・・・・、冗談はやめたほうがいい」 「冗談などではありません!!」 あなたを愛しているから。だからそばにいたい。 「私をヴァンパイアにしてください」 「・・・・・ダメ」 あなたは悲しいほどに綺麗な微笑みを浮かべて言った。 「君をヴァンパイアにはしたくない。絶対にね」 「何故・・・何故ですか、枢様」 「・・・・・・それは君を愛してるからだよ、」 ゆっくり重なった唇は血の香りがした。 あなたの瞳が、血に濡れたように紅く光って見えたのは気のせいだろうか。 そんな小さな疑問は、血の香りに紛れて消えた。