星の宴
「ナニィ、どこ?」
「ここにいますよ、
「屋根の上・・・・?」
「はい。のぼって来られますか」
「私だって子供じゃないわ。それぐらい簡単よ」

は宿屋の屋根の上に上る。美しい青年が一人、そこにいた。
銀色に輝く髪、それと相反するような鳩の血色をした瞳。
聖石の使徒と呼ばれる者達の中でも強い力を持った青玉の使徒である。

「なにをしていたの?」
「星を見ていたんですよ」
「トリノアークが探していたわよ」
「・・・・・・・ほうっておきましょう」

青年、ナウルニールはそう言って空を見上げた。は軽く苦笑すると同じように空を見上げる。

「綺麗ね・・・・」
「そうですね」

ナウルニールはのほうをむいて、微笑んだ。

「まるであなたの金の瞳をそのまま空へ移したかのような月ですね」
「なっ、ナニィッ!!」
「冗談ですよ」
「冗談に聞こえないって!!もう・・・・・・・」

は紅くなった頬をナウルニールから隠すかのように手を当てた。
ナウルニールはクスクスと笑っての手に触れる。

「ほら、わたしとあなたの仲を祝福してくれているじゃないですか」
「ナナナナ、ナニィ!恥ずかしいことをさらりとその顔で言わないで!!」
「おや?どうしてですか。あなただって、ほら、その綺麗な顔に微笑みを浮かべればわたしだってかすんでしまいますよ」
「うっ・・・・・」

は少しむくれた顔でナウルニールによりかかった。

「星は今、宴の最中なのよ」
「宴?」
「神を讃える宴の最中・・・・だからきっと私達の仲を祝福する暇はないの」
「・・・・・・・じゃぁ星じゃない、別の人に祝福してもらいましょうか」
「別の人?」

は首をかしげた。
ナウルニールはうなずいて、下を指差す。
その示されたほうを見たの顔がほころんだ。

「トリノアーク!」
「お前ら、盛ってるなぁ・・・・・・」
「しっ失礼なっっ」
「あなたよりかはましですよ」
「年中盛りついてるくせに」

二人ににらまれ、トリノアークはたじたじとなる。
が、やがて軽く笑った。

「ほら、降りて来いよ。まだお前たちの祝福は続いてるんだよ。セイやカーラも待ってるぞ」

とナウルニールは顔を見合わせると、手をつないで屋根から同時に飛び降りた。
二人同時にトリノアークの前に降り立つ。

「さて、行きましょうか」
「うん」
「まったく、お前らなぁ・・・・・いきなり酒宴の席から抜け出すんだから・・・・・・俺がどんなに苦労して探したと思ってる?」
「あははは、ごめんごめん」

トリノアークはブツブツ言いながら前を歩いていく。
ナウルニールはの手を引いて立ち止まった。
は不思議そうに彼を見た。
ゆっくりと二人の唇が重なった。優しい香りがナウルニールの鼻をくすぐる。

「ナニィ・・・・・」
「愛してますよ、・・・・・・・」
「うん」





ホラ、天を見上げれば星々が瞬いている。
まるで私達を祝福しているように・・・・
綺麗だけど、やはりあなたのほうが美しい・・・・・