呪縛の鎖

シャラッ、と手首につながれた鎖が音を立てる。その音でユウラは目を開けた。

「私は・・・・」

小さく呟いて、あぁそうだ、と思い出す。自分は創造主を裏切ったのだ、と。
さすがにゼウスもユウラの裏切りにはたえきれなかったらしい。
ユウラを気絶させ、この牢屋に幽閉した。

「こんなことをしなくても私の体にはあなたの鎖がたくさん巻き付いているのに・・・」

神を裏切れないようにその身に数々の刻印が刻まれたユウラ。
遠い未来に何があるのか知っていても、それを回避することは許されない。
ゆっくりとすべてが破滅へ向かっていくのを見るだけだ。

「見苦しいですよ、ゼウス様・・・いい加減認めてください」

あなた自身の傲慢と驕りに・・・そして遥か昔のことを思い出してください。
幸せだったあのときのことを・・・・・

ユウラには四枚の翼がある。ゼウスに愛されている証拠だ。
白銀に輝く瞳と髪と翼を持つユウラは天使の中でも抜きん出て美しかった。
その美しさゆえに彼はゼウスに縛られたのだ。

「自由などいらない・・・・・私はあなたがいつものように慈愛に満ちればそれだけで・・・・・」

自由などいつ求めよう。重い鎖を身に背負ったまま、私はどこに行けというのだ。
既にユウラが求めた天使は天界にいない。堕天したのだ。
その時点でユウラは自由を諦めた。結局はゼウスの操り人形なのだ、と。

動けば動くほど、逃げようとすればするほど、そして誰かを愛せば愛すほど、ユウラを縛る鎖は力を増していく。
求めてはいけない。出会ってはいけない。
私は縛られていなければいけないのだ。すべてを狂わせるから。
ユウラの瞳が暗闇にむいた。

「ルシファー様・・・・・・」

せめてこの鎖が落ちたときには、あなたのそばに。
ユウラの呟きは闇に溶けて消えた。