紅葉狩り
昌浩とは貴船へやってきていた。
「わぁ!」
は感嘆の声をあげる。貴船は色とりどりに染まっている。
、置いてくよぉ」
昌浩が声をかけるがは気がつかない。
「たく・・・・・」
「やっぱりお前とは相性がいいらしいな」
「なんでそうなるんだよ」
昌浩は足元にいる凡人には見えない物の怪を見やった。
「鈍感だから」
「物の怪のもっくんの分際で何を言う!」
「もっくん言うな!晴明の孫!」
「孫言うなっ!」
は物の怪と昌浩の言い合いを楽しそうに見ていた。
見鬼の才を持つ彼女には物の怪の姿がちゃんと見えている。
「昌浩」
、もっくんは放っておいて先に行こう」
「うん」
2人は手をつなぐと歩き出した。物の怪がその後ろをとてとてと二足歩行で歩いてくる。
「もっくんって、立って歩くこともできるんだね」
は感心したように言う。物の怪は自信満々に胸をはった。
「おうよ。このオレにできないことなんてないんだぜ」
「わぁ!すごいすごい」
騙されてる。騙されてるぞ、・・・・・と昌浩は無言で思った。
はそれに気がついているのかいないのか、物の怪の芸を楽しそうに見ている。
、もっくんに騙されちゃだめだよ」
「でも可愛いじゃない」
の笑顔に昌浩は見とれた。
「おーい、昌浩。なぁに見とれているんだ?」
そこへ物の怪が声をかける。が昌浩はの横顔を見ているだけで何も言わない。
「・・・・・・・晴明の孫・・・・・・」
「孫言うなっ!」
昌浩は瞬時にそう言うとが笑っていることに気がついた。思わず顔を赤らめる。
「昌浩は孫って呼ばれるのが嫌いなの?」
「うん」
「どうして?」
「オレはオレ、じい様はじい様。もしかしてはオレとじい様が同じと思ってる?」
「・・・・・・」
はきょとんとすると次には笑った。
「そんなことないよ。私は昌浩と晴明様は違うと思っているわ。昌浩は昌浩よね」
昌浩は嬉しそうに瞳を輝かせた。
「そうだよねっ!!」
「うん」
昌浩はの手を握った。は大きな黒い瞳をぱちくりさせて、繋がれた手を見た。
「あっイヤだった?」
「ううん、だってさっきも握ってたし・・・・・昌浩と繋がってる感じするから嬉しいわ」
昌浩の顔は夕焼けよりも紅葉よりも赤い。
「私、昌浩が好きよ。大好き」
「・・・・・・・ほら、昌浩。なんとか言え」
物の怪に後押しされ、昌浩はつっかえながらも言葉をつむぐ。
「おっおれも・・・・・・が好き・・・・・・」
「うん」
「だから・・・・・・・また来年も一緒にここへこよう・・・・・・夏もきっと・・・・・・・・螢が綺麗だろうから」
「・・・・・・・・うんっ!」

来年もそのまた次の年も 一緒に来よう
この美しい紅葉を見に 2人一緒に

紅葉狩り