翡翠のカケラ
「勾陳、どこぉ〜」
安部邸で一人の少女が探し人をしていた。
、どうした?」
「あっ勾陳っ!ほら、コレ見てよっ!」
少女が勾陳に差し出したのは緑色の石が二つ。
「翡翠っていうのよ。勾陳に一つ上げるわ」
勾陳は翡翠の石を手に取った。笑うと少女も嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
「ううんいいの。おそろいね、勾陳と」
少女の名は。見鬼の才が強く、妖たちに狙われやすいため安部邸に居候している少女である。
勾陳はの護衛だった。
「ねぇねぇ勾陳。昌浩と一緒にいる物の怪は?」
「騰蛇だ」
「・・・・・・・・」
は言われた名前を知らないらしく首をかしげた。
「十二神将の一人だ。今は昌浩についている」
「そうなんだ・・・・・勾陳は私だよね」
「あぁ」
はニッコリと笑った。勾陳もそれにつられるように笑う。
「ねぇ、私達ずっと一緒にいられる?私が死んでしまうまで」
「あぁきっと」
「じゃぁその翡翠に誓って。私達はずっと一緒・・・・ねっ」
2人は指を絡ませあった。
そして・・・・
「勾陳っ!」
「騰蛇?どうした、そんなに慌てて」
が大変なことになってるっ!急いで晴明の部屋へ行けっ!」
勾陳は物の怪のただならぬ様子に胸騒ぎを感じ、急いで晴明の部屋へ行った。
「晴明っ!」
部屋に入った勾陳は悲鳴をあげそうになった。
部屋の中には晴明と何人かの神将、そして・・・血だらけのがいた。
っっ!」
「・・・・・」
「晴明ッ!何故・・・・・・・・この邸の中にいたんだろうっ?!」
めったなことでは取り乱さず冷静にことをかまえる勾陳が声を荒げている。
其れほどまでに彼女の中の、という存在は大きかったのだ。
が招き入れた妖が悪意を持った、としか言えんの・・・・・・はじめは大人しかったそうじゃが・・・・・・」
「・・・・・ん」
っ!」
は薄く眼を開いていた。
「勾・・・・・陳・・・・・・・・私がいなくなっても一緒にいてね・・・・・・・私・・・・・・その翡翠と一緒に見守ってるから・・・・・」
は震える手で勾陳の胸元にさがる翡翠を指差した。
・・・・・・」
「・・・・だめだよ、勾陳・・・・・・・勾陳は冷静じゃなきゃ・・・・」
は泣きそうな顔で勾陳を見た。
「私・・・・いつでも勾陳のそばにいるよ?だって・・・・・私、勾陳が大事だもん」
は勾陳の頬に手を伸ばした。
勾陳はその手をつかむ。
「勾陳・・・・・自分を恨まなくていいよ。私が悪いの・・・・・・」
・・・・・・・・」
「だから・・・・・悲しまないで・・・・」
の手からフッと力が抜けた。
・・・・?」
の閉じられた瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
っ!眼を開けろっ!!」
勾陳の声が空しく部屋に響いた。の胸元には翡翠のカケラが紐に通されてあった。
『その翡翠に誓って。私達はずっと一緒』
・・・・・・・」
勾陳が流した雫はの胸元にある翡翠に落ちた。
雫を浴びた翡翠はキラリと小さく輝いた。