雨の恵
雨が降り続いている 昌浩は憂鬱そうなため息をついた 「どうかしましたか、昌浩」 「雪菜姫・・・・いえ、別に・・・・」 「雨ですものね・・・・少し憂鬱になりますわ」 雪菜は小さく笑って昌浩の隣に腰を下ろした 「雨は恵みですわ。命あるところに降って、その命を成長させる」 濡れて風邪を引いてしまうこともありますけどね、と雪菜は言った 「でも私は雨が好きですわ。昌浩は?」 「オレは・・・」 昌浩は雪菜の顔を見て、雨の降る空を見て そして言った 「うん、オレも雨は好きかもしれない」 「そう。それはよかった」 雪菜はそういって昌浩の頭に手を置いた 「でも昌浩、濡れて風邪をひいたら彰子姫が心配するということをお忘れなく」 「うん、わかってる」 昌浩は首をかしげて言った 「雪菜姫も心配するんでしょう?」 「・・・・・・・・えぇ、もちろん」 雪菜は少しだけ拍子抜けた顔を見せてから笑った 「風邪はひくことないよ。だってもっくんいるし」 「おい、俺はお前の襟巻きじゃないとなんど言ったら・・・・」 「頭の上からかぶればオレはそんなに濡れないしね」 物の怪の抗議を無視し、昌浩は言った 雪菜は昌浩につぶされる物の怪を見て笑う 物の怪が文句を言いたそうに雪菜を見てくる 「昌浩、それでは物の怪が風邪を引いてしまいますよ」 「物の怪のもっくんだからそれはない」 「おい、物の怪言うなとなんど言ったら・・・」 「だから大丈夫。雪菜姫、心配しなくていいよ」 物の怪の抗議もなんのその、昌浩は言う 雪菜はこらえきれないと言った様子で笑っている まだまだ雨の降り続く季節は終わらない