ある日の悲惨な事件
とはのんびると茶をすすっていた。普段なら出仕するはずの紫がいるのは、休暇だからである。
「今日一日はなにをするんですか」
「そうだなぁ・・・・・確か昌浩も休みだから、一緒に修行でも」
「昌浩の場合は物忌みというのですよ」
「あっそっか」
あははは、と笑う二人の耳に直後凄まじい叫びが聞こえてきた。
二人して思わず茶器を落としてしまう。
「なっ、なに今の・・・」
「・・・・物の怪の叫びだったような・・・・・」
「いやいや、青龍も叫んでいたよ」
二人は顔を見合わせると立ち上がって声のしたほうへむかう。と、その途中の昌浩の部屋から昌浩が転がり出てきた。
「昌浩?」
が声をかけると昌浩は彼女たちに駆け寄ってきた。
「ど、どうしよう!!」
「なにかあったのですね」
「うん・・・・もっくんが・・・・・もっくんがぁぁぁ!!」
昌浩はいっきに恐慌状態に陥る。は慌てて昌浩の腹に拳をいれ、気絶させた。
は心配そうに昌浩を見やる。
「騰蛇になにかあったのかな・・・」
「部屋を見てみましょう。わかるはずですわ」
二人は意を決して昌浩の部屋を覗き込んだ。そして眼を見開く。
「「青龍?!」」
部屋の中で所在無さげに立っているのは青龍である。
昌浩の部屋には一歩も近づこうとはしなかった青龍が、である。
「・・・・・・」
とはぽかんと口を開いたまま何もいえない。
「やはり、こちらもだったか・・・・」
「晴明・・・・・こちらも?」
姿を見せた晴明の言葉をは反復した。
晴明は溜息をつきつつ、扇で自身の足元を示した。
それをおったとは目が点になる。
「物の怪?!」
「物の怪言うな!!」
「あら・・・・・いつもと声が・・」
はそう言って物の怪を抱き上げる。
「放せっ!」
「晴明、聞いてもいいかな・・・」
「聞かれても答えられん」
「・・・・・・・なんで入れ替わりが起きているの?」
「知らん」
は唖然としてに抱き締められている物の怪と昌浩の部屋の青龍を見た。
入れ替わっているのである。
青龍と騰蛇の体が・・・・・誰がいつどうやってやったのかは知らない。第一そんな体を入れ替える術があるなど知らなかった。
青龍と騰蛇の二人は顔を見合わせると互いににらみ合った。
どうやら互いの体の中にいることが気に食わないらしいが、そんなことを思っていても仕方ないだろう 。
「二人とも、なにがあったか覚えてない?」
「覚えている。昨日、夜中に一度目が覚めた。あたりを見回せばそこは昌浩の部屋ではなく、暗い場所だった」
「目の前に闇に溶け込むような姿をした男がいた」
「墨染めの衣だ。にやりと口端があがったかと思ったら、もう昌浩の部屋にいた」
「墨染めの衣・・」
とは顔を見合わせて溜息をついた。
「知っているようじゃの」
「わかった・・・・行って来よう」
は溜息をついたを見た。
は仕方ないといった様子で苦笑している。
は安部邸を出て行った。