無口の中の優しさ
真っ先に結論から言ってしまおうか六合は本当に無口だ。でも目を見ればだいたいは言いたいことはわかる。
しかも結構優しいのだ。
「六合、買い物に行きたいんだけどいいかな?」
の声に六合は顕現する。
「晴明、六合借りてもいい?」
「別にいいが・・・・・・なにを買うんじゃ?」
「色々とね。傷薬が足りなくなってきたから材料を買わないと、なんだ」
「うむ」
晴明は六合に目を向ける。六合は姿を消した。
「ありがと、六合」
と六合は市へ出掛けていく。
都人たちとは気の知れた仲なのか、値切る値切る値切る。
姿の見えないものを従えているということも知っているらしく、六合が穏行したまま荷物を持っていても誰も何も言わない。
「おや、今日はあの狼じゃないのかね」
「うん、あれは別の仕事を頼んであるんだ」
「ちゃん、またクスリ頼んでいいかい?」
「いつものやつねー、あとで届けるから」
どうやらは都人たちに薬を作っているらしい。六合はなんとなくわかった。
しかも狼ということは普段螢斗たちも顕現しているのだ。ちゃんと人に見えるように。
六合自身は顕現してようが、してなかろうが彼らの姿が見えるためわからなかったが・・・・・・
「ごめんね、荷物もちなんかさせて。ありがと」
「いや、別にいい」
「いや〜本当に助かったわぁ。螢斗たちったら急に高天原に戻るって言うんだもの。よりによってクスリの材料を買いに行こうとした時に」
逃げたのだろうか、と六合は思ってしまった。は文句を言いながら歩いていく。
「・・・・・・・・・お嬢ちゃん」
ふとの歩みが止まった。目の前にいかにも悪者ですといった風貌の男たちがいる。
ニヤニヤ笑いながら男たちはを見る。
「何か用かしら?」
「その後ろのクスリ。全部渡してもらおうか」
「えーだめーこれ私が稼いだ金で買ったんだから」
「なら力ずくだな」
は、こいつら六合のこと感じてないのかな、と呟いている。
振り回される刀をよけ、コブシをよけ、よける合間に男達の体にコブシを叩き込んでいく。
六合は邪魔にならないように近くの貴族の屋敷の上に避難した。
ピッとの頬に紅い筋ができる。がそのときちょうどは最後の一人を倒し終えた時だった。
「いったぁ・・・・・・・・」
頬に流れる血を指で舐め取りながらは六合を見上げた。六合は地に降り立つと、の頬に流れる血に触れた。
「六合?」
「・・・・・」
「私なら大丈夫だよ。このくらいの怪我なら鬼と戦っていればできるものなんだし」
はふと思った。
無口でも優しいんだ、と。(←少し失礼な考え by昌浩)
「ありがとう、戻ろうか」
六合はうなずいた。そして二人して歩き出す。
あとにはにのされた男たちがうめいていましたとさ・・・・・・