ふくざつ
青龍は晴明の背後からにこやかに微笑む少女を見て少々複雑な気分になっていた。
彼女が親しげに話す相手は同じ十二神将の太裳だ。
「それでね、兄さんったら・・・・・」
太裳は少女の話を面白そうに聞いている。
少女は太裳のことが好きだった。晴明もそれを知っている。青龍ももちろん・・・・・
「晴明様、今度一緒に花見でもいかがですか?もちろんそのときは太裳も昌浩も一緒に」
幼馴染の昌浩を太裳の後にするほど、彼女は太裳が好きなのだ。
「いいの、昌浩には伝えておこう」
「はい。それでは、また参ります」
「送りますよ、
「ありがとう、太裳」
という名の少女は太裳と一緒に出て行った。
青龍は晴明のそばに顕現する。晴明は柔らかな笑顔で彼を見た。
「宵藍、そんなにのことが気になっておるのか」
「・・・・・・」
青龍は何も答えない。それが全ての答えだ。
「そんなに気になるのならば、のそばにおればいいものを」
「俺の主はお前だ、晴明」
頑固なやつ、一体誰に似たのだか・・・・・・と晴明は思わず思ってしまう。
そして報われないやつ、とも思う。鈍感なやつ、とも・・・・・

いっぽう太裳と一緒に帰路を歩くはチラリと傍らの青年(?)を見上げた。
「太裳・・・・」
「はい?」
「少し相談にのってくれる?」
「・・・かまいませんよ。でも邸に着いてからのほうがいいでしょう」
「うん」
はそっと太裳の手を握った。
少し紅くなりながら太裳を見上げる。
「だめ?」
「・・・・・・・・かまいませんよ」
太裳はニッコリと笑っての手を握り返した。一時の幸せが訪れる。
邸に着き、の部屋に入った。太裳はの目の前に座る。
「あのね・・・・・・・太裳・・・・・」
そう切り出したの相談事を聞いた太裳は眼を丸くした。
丁寧にの相談事を聞いてやる。聞き終えたころにはpはすっきりとした顔になっていた。
「ありがとう、太裳」
はそう言って、太裳の頬に軽く唇を押し付けた。
太裳は一度だけの頬に触れ、の耳元である言葉を囁くと姿を消す。
「・・・・・・・うんわかってる。あなたが応援してくれているもの」
翌日、は供も着けずに安部邸へ向かっていた。
そんなのことを後ろからつけていく男が数人・・・・・・・・
ももちろん気がついていたが、こんな好機をわざわざ逃す必要はない。
「お嬢ちゃん」
「・・・・・」
は怯えたような表情で姿を見せた男達を凝視した。やはり怖いものは怖いのだ。
腕をつかまれる。むさくるしい男の顔が間近に迫った。
「ほぉ、上玉じゃねぇか。売れば高くつくぜ。着ているものもだ」
「はなして・・・・・」
は震える声で反抗した。男達はニヤニヤ笑いを浮かべる。
の着物に手が伸ばされる。
「いやっ!」
「大丈夫だって。優しくしてやるからよ」
「いや・・・・・・や・・・・・・・・・・・・・・っ青龍ぅぅぅぅ!!
の声が空に響いた。

晴明が書物をめくっていくのを見ていた青龍はハッと顔を上げた。
今、の悲鳴が聞こえた。青龍は顔を晴明へと戻す。
「行け、宵藍。お前を呼んでいるようじゃ」
晴明の言葉に青龍はすぐさま姿を消す。
の悲鳴のしたほうへ青龍は走っていた。胸騒ぎがする。
朱雀大路の端のほうで男達が群がって何かをしていた。
青龍の頭に血が上る。
「いやぁぁぁぁ!」
っ!」
名を呼ぶと涙目では青龍を見つけた。ホッとしたような顔になり、そして助けを求める。
青龍は十二神将、その理は"人を傷つけてはいけない"しかし青龍はそれを守ってを見捨てるなどできなかった。
に・・・・・・・触れるなっ!」
青龍の神気が苛烈なものへと変わり、それを本能で感じ取った男達が次々に気絶していく。
は男達が気絶したのを見ると青龍に抱きついていた。青龍はの体を抱えて、家々の屋根に飛び上がる。
「大丈夫か?」
「こわ・・・・・怖かった・・・・・・」
青龍に抱きつきながらはしゃくりあげる。青龍は無事であったことにほっとしてを抱きしめてやった。
「青龍が着てくれなかったら私・・・・・・・」
「・・・・・何故太裳を呼ばなかった。お前は太裳が好きなのだろう?」
「・・・・・・・・青龍?」
は怪訝そうな顔をして青龍を見た。
「何で太裳が出てくるの?」
「お前は太裳が好きだと晴明から聞いた」
は呆れたようにこめかみに触れた。
「太裳のことは兄さんみたいで好きだなって言っただけよ」
「そうだったのか・・・・・・・・」
青龍はホッとしている自分に気がついた。
は未だ青龍に抱きついたままである。
、離れろ」「やっ」
「離れろ」「いや」
「・・・・・・・・何故だ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私は青龍が好きだから」
青龍は一瞬固まった。は真剣な眼で青龍を見る。
「私が好きなのは青龍。誤解しないで」
そして視線を青龍から外した。その横顔は真っ赤に染まっている。
青龍はの頬に手をかけ、自分の方へむけた。
「本当か?」
「神さまに嘘つけるほど私は度胸ないもん」
「神の所有物になる度胸はあると見える」
「・・・・・・・・」
はうなづいた。青龍はの頭に手を置き、ポスッと自分の方へ抱き寄せた。
「俺から離れることは許さない」
「・・・・・・わかりました、青龍・・・」
「それから俺のことは宵藍と呼べ」
「それって晴明様からもらった大事な名前じゃ・・・・・・・」
「大事な名だからだ。お前の声で・・・・・・・呼んで欲しい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
は必死で気絶しそうなのを気力で抑えた。
そして口を開く。
「・・・・・・・・・宵藍・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・上出来だ」
青龍はを引き寄せて、口付けた。
唇をはなし、の顔を見ると既に真っ赤になっていた。
「青龍・・・・・いえ宵藍・・・・・・・・・神さまもちょっとは礼儀作法を学んで頂戴・・・・・・」
は安倍邸に到着したのち、太裳にお礼を言った。
"励ましてくれて、ありがとう"と・・・・・・・そして晴明にそっと打ち明けた。
「・・・・・・・・・青龍ってあんなに意地悪な性格でしたっけ?」と。



せせせ・・・・・・・・・・青龍が偽物だぁぁぁぁ!!
すみませんっ(スライディング土下座)
きゃぁっ!青龍派の皆様が怒っていらっしゃる!!
イメージ崩してしまって申し訳ございませんっ!
やばい・・・・・・これは本当に・・・・・だって本人じゃないし・・・
青龍自身にもにらまれそう。矢を射る如く、あの眼光で・・・・・・
かっ隠れなければっっ!(さっさと逃走する管理人でしたとさ)
P.S 管理人より
太裳がヒロインに言った言葉ですが
『誠意を込めて伝えて、相手に通じない想いなんてないんですよ』です
かっこわる・・・・・・ちなみにヒロインの相談とはもちろん・・・
『どうしたら青龍を落とせるか』です
・・・・・・誰か管理人に突っ込んでください・・・・・