ケダモノ洋菓子店
「パティスリーでしたっけ、向かい側にできたのは」「えぇ。は行かないんですか」
「行く気がしないんですよ。やっぱり私はルカの作るケーキが好きですから」
「幼馴染でしたっけ?」
「えぇ。シンも一度食べてみたらどうです。はまりますよ」
「いいえ、私は遠慮しておきます」
は小さな溜息をついた。友人のシンは新しくできたケーキ屋が好きらしい。
としては幼馴染のルカ夫婦がやるケーキ屋のほうが好きだ。
彼らの家の前でシンと別れて、は鍵を取り出す。ルカから受け取っていた家の合鍵だ。
夫婦でケーキ屋を営む二人がいない間、子供たちの面倒を見られるように、と。
とりあえずリビングに向かう。今の時間いるとすればそこだ。
「ルカ、レイ、お邪魔してま・・・・・」
「ルカ、くすぐった・・・」
「あっ、さん!こんばんは」
「こんばんは、マヤ、キラ、ガイ。ところで、あの見ているとこちらが甘くなってくる夫婦はなにやってるのでしょうか?」
「いつものことだ。で、さんは何を?」
「こぉら、キラ。そんなことを言っているといいものあげませんよ。どうせ今日も晩御飯はケー・・・キですね」
は机の上に置かれたケーキを見た。苦笑してルカとレイを見る。
「ルカ、レイ。いい加減にしないとブチきれますよ」
「さん、こわーい」
「あっ、・・・・/////」
「いつからいたんだ?」
は綺麗な顔をほころばせた。
「はい、ガイ、キラ、マヤ。お土産ですよ。佃煮とサラダを作ったんです。よかったら食べてください」
「わぁ!やったぁぁ」
「、すみません・・・」
「かまいませんよ。それとレイ、三人の子供を持つ親としてこれはいただけませんよ」
「すみません」
「ルカ、なんでしたらパティスリー、潰してきましょうか」
「が言うと本気に聞こえる・・・・」
ルカは苦笑した。はムスッとしてルカをにらんだ。
子供三人は嬉しそうにからの包みを開けている。は困ったような顔をしてケーキを見た。
「でもこんなにケーキがあまると本当に困りますね・・・・シンにも勧めたのですが・・」
「が私達の作るケーキをおいしそうに食べてくれるから、それで満足だ」
「ですが、ルカ。このまま食事はずっとケーキなど言ったらガイもキラもマヤもレイも、太りますよ?」
「・・・・・・それはいやだな」
レイのほうを見てルカはつぶやいた。確かにいやである。
「じゃぁケーキはもらってきますね。職場の同僚達に布教しますから」
「あぁ」
「、一緒に食べて行きませんか」
「ご一緒したいところですが、今夜は先約があるのですよ」
「誰と?」
は微笑んでガイの頭に手を置いた。
「素敵な人ですよ」
「よかったな、。いつまでも独り身じゃ困る」
「おや、失礼な。あなたたちが結婚する前から付き合っていた方ですよ。でもあちらは仕事で海外にずっと行っていたんです。先日帰ってきたという連絡がありまして。今日、会うんです」
は幸せそうな笑みを見せた。ルカは小さく笑っていくらかケーキを包んでに渡した。
が帰る間際、ルカはそっとささやいた。
「結婚式のときのケーキが私達に任せるのだろう?」
「・・・・・・もちろんですよ」
はそれから待ち合わせ場所のレストランへむかった。カウンターで名前を告げると奥の個室へと通される。
個室に黒髪の青年がいた。彼はユウラを見ると立ち上がり、ゆっくりと頬に口付けを落とした。
「久し振りだな、」
「はい。ルシファーもお元気そうで何よりです」
「それは?」
ルシファーはが手に持つ箱に目を落とした。
「私の知り合いがやっているケーキ屋のものなのですが・・・・・・・・そう、ルシファー、実は折り入っての頼みがあなたにあるのです」
「の頼みならいくらでも聞こう」
「はい。実は」
その後ルカたちのもとにから手紙が届く。
「ルカ・・」
「まさかの相手って地獄商事の」
「すげぇ、玉の輿」
『実は私の夫となるルシファーの会社で新しいチェーンタイプのケーキ屋を作ろうと考えていたのです。ルカ、この本店のケーキ屋を任されてはもらえませんか。無論あなたオリジナルのケーキで勝負してもらいますが』
「やったじゃないですか、地獄商事といえば天界商事、流星商事と並ぶほどの大会社です」
「あぁ・・・・」
ルカは小さな笑みをこぼした。そして幼馴染に胸のうちで感謝の言葉を述べたのであった。
後日、ルシファーとの結婚式が行われた際、披露宴にルカの作ったケーキが並べられたという。