THE END
「なにかレイを救ういい方法はないのでしょうか・・・」神殿を歩きながら、はレイを救うための方法を考えていた。
そもそもレイもルシファーもゼウスの怒りにふれたせいで閉じ込められたのだ。
ゼウスはそのことを覚えているのだろうか。
「様」
「パンドラでしたか。どうしました?」
は背後を振り向いてパンドラを見た。
幼く見える神官長はに笑みをむけた。
「レイ殿をお救いしたのでしょう?」
「できる方法があるのですか」
「はい」
「教えてはもらえませんか」
パンドラはうなずいた。
はほっとすると同時に笑顔を見せた。
「ありがとうございます、パンドラ」
「いえ・・・」
パンドラとレイの閉じ込められている牢へとむかいながら、は疑問を口にする。
「でもなんで助けてくれるのですか」
パンドラは足をとめてをむいた。
「もう私はあなたが泣いているところを見たくないのです」
「えっ」
「私達神官はあなたを慕っています。そのあなたが困っていることなら、私達のできる範囲で助けようと」
は小さく微笑んだ。
そして優しくパンドラの手を握る。
「あなたたちに出会えてよかったと想います」
「様・・・」
パンドラに連れられてレイの牢へとついた。
「レイッ」
「?何故ここに」
パンドラが牢の鍵をもってくる。
はそれを使ってレイを助けるとパンドラをむいた。
「パンドラ、ありがとうございます。あなたはもう戻ったほうがいい」
「様、お気をつけて」
パンドラはそう言って牢を出て行く。
はレイを見た。
「ルカが待っています。すぐに隠れ家へむかいましょう」
「、すみません」
「何がです」
「あなたに迷惑をかけてしまいました」
は首をふった。
「あなたは私の仲間です。大切な人を助けることは悪いことですか」
「・・・・・・」
「急いでルカのもとへ行きましょう」
レイをつれてルカの隠れ家へむかったは神官たちに感謝した。
誰にも知られずに神殿を出られたのはひとえに神官たちのおかげなのだ。
「ルカ」
「か・・どうし」
ルカの言葉が途中で途切れた。
「レイを助けました」
「ルカ」
レイはルカのもとに駆け寄り、抱きついた。
「会いたかった」
「よかった・・・無事で」
二人が嬉しそうな笑顔を見せるのを見たはほっとした。
これで二人は逃げられる。
逃げようとしなくとも、の力で下界に送ることくらいは可能だ。
「ルカ、ゼウス様が気がつかないうちに・・・・」
「は・・・」
は首を振った。
レイの手を取って銀細工の腕輪をその上にのせる。
「あなたたち二人にこれから幸福が訪れることを祈っています」
「ッ」
の手が一閃した。
レイとルカの姿が消える。
下界にうまくいけただろうか。
「ごめんなさい、ルカ・・・・あの人はもういないのです」
神殿に戻ったを迎えたゼウスは胸の中にを閉じ込めた。
「ゼウス様・・・」
「邪魔者は」
「仰せの通りに」
はそう言ってゼウスの腕から逃れる。
悲しげに顔を曇らせるとゼウスの手が頬に触れた。
「ルシファーを助けたいか」
「・・・」
は何も答えない。
ルシファーはゼウスに殺されたのだ。
それもの目の前で。
「もう言わないで・・・・」
の瞳から涙が溢れる。
ゼウスの手がに伸ばされるとは反射的に身を引いた。
「」
「もうたくさんです。これ以上罪を重ねないで下さい」
ゼウスの瞳が細められる。
は短剣を胸元から取り出すとゼウスにむけた。
「ゼウス様、私もお供いたします。だからどうぞ安らかに・・・」
短剣を握り締めたまま、はゼウスの胸元に飛び込んだ。
胸に鋭い痛みを感じたのはそのすぐあとだった。
「あっ」
口から熱く苦いものがこぼれてくる。
は自分の胸を見下ろした。
稲妻の剣が胸を貫いている。
「・・・残念です」
血で濡れたの唇にゼウスは己のそれと重ねた。
の手から剣が落ちる。
「・・・・」
「あなたは・・・ひどい・・・方・・・・・」
の瞳が閉じられる。
が、その体が散りとなって消えることはなかった。
の体はゼウスの腕の中で冷たくなっていくだけである。
「私はお前さえいれば、それでよかった」
大切なものを繋ぎとめておくためにゼウスは大事なものを失った。
どちらもゼウスにはかけがえのないものなのに。
「・・・もうお前に会うことはないだろう・・・さらばだ」
ゼウスはの体を燃やしだ。
は炎に包まれ、その姿を変えていく。
これを期に天界に天使はいなくなったのであった。