あなたのために
「ユダ?」

天空城のユダの部屋にが顔をのぞかせたのは、ある晴れた日のことだった。

「どうした、は今、レイとサラのもとだぞ」
「ううん、に用じゃないんだ」
「じゃぁなんだ」
「あなたに用だよ、ユダ」
「俺に?」

はうなずくとユダの部屋に入った。
ユダはを目で追う。

にぃ、不安なんだよ」
「不安?」
「ユダにぃが自分をおいてどこかに行ってしまうんじゃないかって」
「馬鹿な」

はうなずいた。

にぃはそんな馬鹿なことでも不安になる。ユダにぃも知ってるでしょ?」

ユダは言葉に詰まった。
確かにはユダの姿が見えなくなると寝ずにまっていることがある。

「それと自分が愛されているのか不安がってるよ」
「俺はを愛してる」
「それはユダにぃが想っていることであって、が思っているとは限らない」

は身を乗り出して、ユダを見た。

にもっと愛してるって言ってあげて。僕らにぃが壊れるんじゃないかって怖いんだよ」

ユダはから視線を外した。

「ユダにぃ!」
、俺はいつかゼウスに反逆する。そのときは邪魔になる」
「本気・・・・?ユダにぃ」

ユダがうなずいたのを見たはみるみる瞳に涙をためた。

「ユダにぃのばかっにぃが泣くのはユダにぃのせいなんだから!!」

そう叫ぶとはユダの部屋を飛び出す。
ちょうど戻ってきたとぶつかりそうになりながらもは駆け去った。

「あのユダ・・・・・が何か・・・・」
「なんでもない。、こっちに」

はユダのそばに近寄った。
ユダは自らの膝にを座らせ、漆黒の瞳をのぞきこんだ。

「泣いていたのか」

目元に指でふれれば、 は赤くなって視線をそらせる。

「俺のせいで・・・・?」
「いいえ、違います」

はかすかに唇を振るわせる。
ユダはを抱き締めた。

「私は不安なんです・・・・ユダ、あなたがいなくなってしまうのではないかと」
「それは・・・」
「でも、ユダが何も言わずいなくなるのは私のせいでもあって」
「どういうことだ」
「私が信頼に足らないから」

はぽろりと涙をこぼした。

「あなたはいつかいなくなってしまう・・・わかりきったことです」
・・・・・」

は涙にぬれた瞳をユダにむけて微笑んだ。

「愛してます・・・私はあなたの信頼にたる天使になりたい。でも私の力などわかりきったこと」

ユダはを抱き締めた。

「俺がお前を信頼してないはずがないだろう。俺はお前を巻き込みたくないんだ」
「ユダ・・・」
が大切だから」

はぼろぼろと涙をこぼし続ける。
ユダは強くを抱き締めた。

「ユダ・・・あなたとともにどこまでもありたいです」
「あぁ、お前がそれを望むのならば」

はうなずいてユダにそっと口付けた。

「俺もを愛してる」

は嬉しそうに笑んだ。
そして運命の日。
の剣はユダのためだけに同胞の血に濡れたのであった。