Sadame
はその天使を見つけると走りよった。

「ルシファー様っ」
か。どうした」

ルシファーは、抱きついて震えるの背にそっと腕を回した。

「恐ろしい夢を見たのです」
「それが?」

は涙目でルシファーを見上げた。
幼さを残す端整な顔に光が影を落としている。

「ルシファー様が、地獄へと堕ちてしまうのです」
・・・・・」
「ルシファー様、しばらくゼウス様のもとへ姿をお見せにならないで下さい」

ルシファーの手がの頬を愛しそうになでる。

「そんなに不安がるな。私はお前を置いては行かないから」

ルシファーは、なおも何かを言おうとするに口付けた。
崩れるのからだを支え、幾度も口付ける。
抵抗する力のなくなったは荒く息をつきながら、ルシファーを半ば恨めしげに見た。

、愛している」
「ルシファー様・・・お茶を濁さないで下さい」
「そんなつもりはないが」

の瞳に射抜かれ、ルシファーは僅かながら身じろぐ。

「運命は変えることのできない絶対的なもの。私は無力です」
「そんなことはない」

はかぶりをふった。

「私は知っています。この先私は見ているだけしかできない」

はルシファーの腕の中で涙を流した。

「私は未来が見えていても何もできないのです」

ルシファーは優しくの髪を撫でた。

は私のそばにいるだけでいい」

は顔を上げた。
優しく微笑むルシファーの顔がそこにあった。

「そばにいるだけで・・・」

はまた涙を流したもう運命を変えることはできないと悟ったからである。
は自分が無力であることを恨んだのであった。