喧嘩のあと
「ルカなんかもう知らないから!」「!」
天界でも仲がいい天使たちのうち二人が喧嘩別れした、と天界中で噂になった。
その噂の二人、鳳凰のルカとのは今互いの親友のもとにいた。
ルカがいるのは朱雀のレイと黎明のサラのもとである。
「呆れた」
そう溜息をついたのはサラである。隣でレイもうなずいている。
「そうですよ、ルカ。少しはの気持ちも考えてあげないと」
「そもそもの発端も聞いてないけど・・・何があった?」
ルカは言いにくそうに顔をそらした。話してくれなければ何の解決にもならない。
二人とも本当に意地っ張りだ。
いっぽうは麒麟のユダと黒曜のスウのもとにいた。
「ルカと喧嘩したのか」
「、いったいなにが・・・」
「ルカに約束忘れられた」
「はぁ?」
ユダとスウは互いに顔を見合わせて溜息をついた。そんなことで喧嘩して自分たちの時間を邪魔されるなどたまったものではない。
「約束というのはどんなことなんだ」
「ルカが聖霊祭直前に下界に降臨するから一緒に行こうって。でもさっき聞いたらルカそのことを忘れているみたいだから」
たかがそれしきのこと、とユダもスウも呆れ顔だ。
「、ルカと仲直りすべきです」
スウが言う。は顔を曇らせた。
泣きそうな顔はルカにとっては魅力的だろうが、正直ユダとスウにとってはどうでもいいことである。
「あっルカ」
「えっ・・・」
ルカが彼らのもとに降りてきた。
「・・」
「やっ」
お前はわがままっこか、と二人は突っ込んだ。ルカは暴れるを抱くとユダとスウを見た。
「ユダ、スウ、迷惑をかけたな」
「まったくだな、ルカ。だがを泣かせるようなまねはするな」
「そうですね、を泣かせた場合私が許しませんからそのおつもりで」
冗談と笑い飛ばすほどの軽さが言葉にない。
「わかっている」
ルカはうなずくとを抱き締めたまま空へと飛んで行ったのである。
「静かになりましたね」
「あぁ」
「これで少しは静かになるでしょうか」
「ルカとだからな」
どちらも自分に関心がなく、恋人のばかりを考えているからすれ違う。
しばらくのいざこざには耐えなければいけないようだ。
いっぽうを抱き締めたままのルカは天空城の自室にをつれてきていた。
「」
「ルカなんか嫌い」
「約束を忘れたわけじゃないんだ」
「じゃぁなんで?降臨するのを楽しみにしていたのに」
ルカは言いにくそうに目を伏せた。
「悩んでいたんだ・・・」
ルカはそう言った。は首をかしげる。
「私がお前と共にいていいのかと」
「何いって・・」
「いつかゼウスに歯向かうかもしれない私だ。そのときがきたら私はお前に迷惑をかける」
はルカの側に歩み寄り、彼を抱き締めた。
「約束を守らないルカも嫌いだが、わたしはわたしを信じてくれないルカも嫌いだ」
「・・・」
「わたしはなにがあったとしても、たとえ仲間に剣を向けるようなことがあってもルカのそばにいる」
ルカはの腰に腕をまわした。
「あぁ」
そののちにユダとルカは天界に反旗をひるがえす。そのときの二人のそばにはスウとがいたのであった。